ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

源氏物語 第31帖

真木柱 まきばしら

あらすじ

鬚黒の大将は、式部卿宮の娘である正妻がありながら玉鬘に執心し、強引に契りを結ぶ。病に衰えた北の方は、雪の夜の香の灰の騒ぎののち、娘の書き残した「真木の柱」の歌とともに実家へ引き取られる。玉鬘は尚侍として参内し冷泉帝の思慕を受けるが、やがて大将の邸に迎えられ、若君を出産する。

この帖の人物

場面 第1–5場面

第1場面密通の発覚と源氏の嘆き鬚黒の大将は、玉鬘との仲を帝にお聞かせすることになるのを恐れ、人に漏らさぬよう諌めるが、隠しきることはできない。源氏は不本意な成り行きを嘆きながらも儀式を整え、父の内大臣もこの縁を認める。三日の夜の消息のやり取りを伝え聞いた人々は、大将の心をありがたいものと噂し合い、その噂は帝の耳にも届く。第2場面霜月の沙汰と北の方の嘆き霜月になり、玉鬘の尚侍としての参内の沙汰が進む中、鬚黒の大将は昼も隠れるように籠もっており、尚侍の君は快く思わない。兵衛督は妹である大将の北の方の境遇を人笑いと嘆くが、今さら恨んでも甲斐がないと思い返す。まめ人で通してきた大将は玉鬘に心を奪われて人が変わったようになり、北の方は式部卿宮の娘らしく深い情のある方だったことを思い出しては、恥ずかしく残念に思い続ける。第3場面昼の訪問と渡り川の贈答歌鬚黒の大将が昼に玉鬘を訪ねると、玉鬘は悩ましげに萎れていたが、やがて打ち解けた物語となり、大将は渡り川の歌を詠みかける。玉鬘は三瀬川の歌で消え入りたい思いを返すが、大将はほほ笑んで取りなし、尚侍としての参内のことをこまかに話し合う。大将は玉鬘を自邸へ迎える支度を急ぎ、北の方や子どもたちへの配慮も目に入らなくなるほど玉鬘に心を移している。第4場面式部卿宮の不興と迎えの相談鬚黒の北の方は物の怪に悩まされ夫婦仲も離れがちだが、大将はなお重んじている。ところが式部卿宮が玉鬘への移り心を聞いて怒り、東の対を整えて娘を引き取ろうと言い出し、北の方は思い乱れて病が悪化する。大将は取りなそうとするが、北の方は自分の至らなさを恥じ、父宮のことを持ち出す大将を恨めしく思う。第5場面衰えた北の方病に痩せ衰えた北の方の様子が描かれ、父宮譲りのなまめいた容貌も、今はやつれて華やかさを失っている。大将は宮の御ことを軽んじるつもりはないと慰め、通いの事情を弁明して、仲良く語らうよう諭す。北の方は世の人にも似ぬ身の不幸を嘆き、大殿の北の方のことも口にするが、大将は一日中そばにいて語らい続ける。

場面 第6–10場面

第6場面雪の夜の香の灰雪の夜、大将は玉鬘のもとへ出かけようとそわそわするが、正気で穏やかな北の方の様子に心苦しく思い乱れる。北の方に促され大将が身支度を整えるそばで、静かに寄り臥していた北の方は、突然火取りの香の灰を大将に投げかけ、大騒ぎになる。出かけることもできなくなった大将は、僧を呼んで加持をさせる。第7場面片敷の袖の文灰の事件で泣き明かした鬚黒の大将は、翌朝、玉鬘へ言い訳の文と片敷の袖の歌を送る。しかし玉鬘は夜離れを何とも思わず、大将の心のときめきにも目を留めないので返歌はない。大将は胸をつぶして思い暮らす。第8場面木工の君との贈答北の方の修法が始まる中、大将は焦げた衣を着替えて身づくろいをし、出かける支度をする。薫物を焚く木工の君が炎の歌で秘めた思いをほのめかすと、大将は煙の歌で応じるが、その受け止め方は冷ややかである。第9場面実家への迎えの決断大将は玉鬘に心を奪われて久しく籠もり、北の方の物の怪の騒ぎにも恐れて近寄ろうとしない。父の式部卿宮は娘の扱いに憤り、自邸へ迎える決断をして急に迎えを出す。北の方も世を嘆きつつ、父の言葉を受けて思い立つ。第10場面真木柱の別れ迎えの日、母子は別れを惜しみ、女房たちは荷を片付けながら泣き騒ぐ。姫君は父に会えぬまま、慣れ親しんだ東面の柱に真木の柱の歌を書き残し、母も返歌をする。残る木工の君は中将の御許と歌を交わして別れを惜しむ。

場面 第11–15場面

第11場面大北の方の恨み言宮邸に移った北の方のもとで、母の大北の方が源氏への恨み言を口にし、継子をかしづく源氏の仕打ちを激しく責める。式部卿宮は、世に難のない大臣を貶めるなとたしなめ、源氏の思慮深さと自らの不幸を語るが、大北の方はますます腹を立てて言い散らす。第12場面姫君との面会大将は北の方が宮邸へ移ったと聞いて思い乱れ、玉鬘にほのめかして宮邸を訪れる。姫君の真木柱の歌を見て涙をこぼし、木工の君に諌められながらも姫君には会えず、男君たちと語らって帰る。玉鬘の見事な様子に比べ、北の方のひねくれた様子を思い、万事慰められる。第13場面尚侍の参内と男踏歌大将が訪れなくなったことを宮邸では嘆き、紫の上も恨まれる原因になることを苦しむが、源氏は人の仲は隠せないものだと慰める。大将は思い返して年が改まってから玉鬘を尚侍として参内させ、男踏歌の夜、承香殿の東面に局が定まる。内裏は華やかに賑わい、玉鬘の局の袖口は他の御方々よりも格別に華やかであった。第14場面帝の思慕と紫の贈答参内の夜、大将は玉鬘を退出させようと一日中責めるが許しは出ない。兵部卿宮の歌をきっかけに冷泉帝が玉鬘のもとを訪れ、紫の歌で思いを託すと、玉鬘は慎重に返歌する。帝は名残惜しく梅の花の贈答を交わして帰り、大将は気が気でなく、口実を作って玉鬘の退出の許しを得る。第15場面自邸への迎えその夜、鬚黒の大将は玉鬘を自邸に迎え入れる。父の内大臣も表向きは了承するが、源氏はゆくりない迎えを不本意に思い、宮邸に残された帝の玉鬘への執心も気がかりにされる。

場面 第16–19場面

出典・底本

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第31冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。