ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第34帖 若菜上 / 第8場面

四十の賀と若菜の宴

あらすじ・人物・読み方

年が改まり、源氏の四十の賀の準備が進む。正月二十三日の子の日、花散里が若菜を献上し、南の御殿では源氏が久々に前斎院の尚侍の君と対面する。若菜に小松を添えた歌と源氏の返歌が交わされ、賀の宴の華やかな幕開けとなる。

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現代語で読む

年も改まった。朱雀院では、姫宮が六条院へお移りになるご準備をなさる。お付き合いのある人々は、とても残念にお思い嘆く。帝にもお心づかいがあって、申し上げていらっしゃるうちに、このようなご決定をお聞きになって、お思い止まりになった。

それはそうと、源氏は今年四十歳におなりになったので、お祝いのことを、朝廷でもお聞き流しなさらず、世間の一大事として、前々から評判になっているのを、事の煩わしさが多く仰々しいことは、昔からお好みにならないご性分で、皆お断り申し上げなさる。

正月二十三日、子の日にあたる日に、左大将殿の北の方(花散里)が、若菜を献上なさる。前もって様子も漏らさず、とてもひどく内緒でご準備なさっていたので、突然のことで、お止め申し返すこともおできにならない。内緒とはいえ、それほどのご権勢なので、お渡りになるご儀式などは、とても評判になるほどである。

南の御殿の西の放出にお席を用意する。屏風、壁代をはじめとして、新しく払い整えられている。きちんと倚子などは立てず、御地敷四十枚、御茵、脇息など、すべてのそのお道具類を、とても美しくさせていらっしゃる。

螺鈿の御厨子二具に、御衣箱四つを据えて、夏冬の御装束。香壺、薬の箱、御硯、ゆする坏、掻上の箱などのようなもの、それぞれに美しさを尽くしていらっしゃる。御挿頭の台には、沈、紫檀で作り、珍しい文様を尽くし、同じ金でも色づかいを変えた、心づかいがあり、新風で華やかである。

尚侍の君は、風雅の深い、才気のほとばしる人で、目に馴れない様子に仕上げていらっしゃるのが、大体のことは、わざわざ仰々しくない程度である。

人々が参上などなさって、源氏がお席にお出ましになるということで、尚侍の君とご対面がある。お心の内には、昔をお思い出しになることもさまざまであったことだろう。

とても若く美しくて、このようにお祝いなどということは、数え間違いではないかと思われる様子の、艶やかで、人の親らしくなくいらっしゃるのを、珍しくて年月を隔てて拝見なさるのは、とても恥ずかしいけれど、やはりはっきりとした隔てもなく、お話し交わしなさる。

幼い君たちも、とても可愛らしくていらっしゃる。尚侍の君は、続いてまでご覧に入れまいとおっしゃっていたのを、大将(夕霧)は、こういう機会にだけでもご覧に入れようと、二人とも同じように、振分髪の無心な直衣姿でいらっしゃる。

「過ぎゆく年齢も、自分自身の心には特に気にとめられず、ただ昔ながらの若々しい様子で、改めることもないのを、このように末々の者たちの催しによって、中途半端なまでに思い知らされる折もございました。

中納言(紅梅)がいつの間にかと用意したというのを、仰々しく思い隔てて、まだ見せていません。人より特に、数え取ってくださった今日の子の日こそ、なお恨めしい。しばらくは老いを忘れてもいられましょうものを」

と申し上げなさる。

尚侍の君も、とてもよく成熟し、重々しい様子まで加わって、見る甲斐のある様子をしていらっしゃる。

若葉が茂る野辺の小松を引き連れて、もとの岩根であるあなた様のご長寿を祈る今日ですこと

と、せめて大人びて申し上げなさる。沈の折敷を四つにして、御若菜の分だけ差し上げる。源氏は御土器をお取りになって、

小松原の末長く続く齢に引かれて、野辺の若菜も私の年を摘み取るように若返ることでしょう

などと申し交わしなさって、上達部が大勢、南の廂に着席なさる。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第34冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。