ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第35帖 若菜下 / 第17場面

文の発覚

あらすじ・人物・読み方

柏木の文が女三の宮の茵の下から見つかり、源氏は筆跡を見抜く。宮と小侍従は発覚に震え上がり、源氏は知らぬ顔を続ける。

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現代語で読む

柏木も、〔源氏が〕このようにお越しだと聞くと、大それたことに心を誤って、切ない言葉の数々を書き続けて、〔宮へ〕送ってよこした。〔小侍従が〕対の屋にちょっとお越しになっている間に、暇があったので、忍んで〔宮に〕お見せ申し上げる。

「厄介なものを見せるのは、とても辛い。気分がますます悪いの」

と言って横になっていらっしゃると、

「それでも、ほら、この端書きが、いかにも痛々しくございますよ」

と言って広げると、人が参るので、〔宮は〕とても苦しくて、几帳を引き寄せてその場を離れた。

ますます胸が潰れる思いでいると、院〔源氏〕がお入りになったので、うまく隠しきれず、〔文を〕御茵の下に挟んでしまわれた。

夜の頃、二条院へお移りになろうとして、お暇を申し上げなさる。

「こちらでは、悪くは見えなさらないが、まだとても頼りなげだったのを見捨てたように思われるのも、今更ながら気の毒で。僻んだことを言いなす人がいても、決して気にかけなさるな。今に見直しなさるだろう」

とお語りになる。普段は、少し幼い冗談なども打ち解けて申し上げなさるのに、ひどくしんみりして、はっきり顔を合わせて申し上げなさらないのを、〔源氏は〕ただ世を恨めしく思うご様子だと受け取っていらっしゃる。

昼の御座所に横になっていらして、お話など申し上げなさるうちに暮れてしまった。少しお休みになっていたところ、蜩が華やかに鳴くのに目を覚まされなさって、

「それでは、道が覚束なくならないうちに」

と言って、お召し物などを差し上げ直す。

「月を待ってから、とも言うそうですのに」

と、とても若々しい様子でおっしゃるのは、憎らしくないことよ。「その間にもどうだろうとお思いか」と、心苦しげにお思いになって、立ち止まっていらっしゃる。

夕露に袖を濡らさせようというのか、蜩の鳴くのを聞きながら起き上がって行こうとは。

片意地なご性格に任せて言い出されたのも可愛らしいので、座り直して、

「ああ、苦しいこと」

と、嘆いていらっしゃる。

待つ里〔二条院〕ではどう聞いているでしょう、あちらこちらで心を騒がせる蜩の声を。

などと思いためらって、やはり情けなくするのも心苦しいので、お止まりになった。心が落ち着かず、そうはいっても物思いに沈んでいらして、果物を差し上げるなどして、お休みになった。

まだ朝の涼しいうちにお移りになろうとして、早くお起きになる。

「昨夜の団扇を落として、これは風が乏しいことよ」

と言って、御扇を置かれ、昨日うたた寝なさった御座所のあたりに立ち止まってご覧になると、御茵の少し乱れた端から、浅緑の薄様の文の巻いた端が見えるのを、何の気なしに引き出してご覧になると、男の筆跡である。紙の香などとても艶やかで、わざとらしく書いた様子である。二重に細々と書いたのをご覧になると、「紛れようもなく、あの人の筆跡であった」とお認めになった。

御鏡などを開けて差し上げる人は、〔源氏が〕ご覧の文だろうと、事情も知らずにいるのに、小侍従が見つけて、昨日の文の色だと見ると、たいそうひどく、胸がどきどき鳴る心地がする。御粥などを差し上げる方に目もくれず、

「まさか、それではないだろう。たいそう大変な、そんなことがあるものか。〔宮が〕しまったのだろう」

と思い直す。

宮は、何の気もなく、まだお休みになっていた。

「ああ、幼いこと。このような物を散らしておいて。私でない人が見つけていたらどうなったことか」

とお思うのも、心が劣るようで、

「やはりそうだ。全く奥ゆかしいところのないご様子を、気がかりだとは見るのだな」

とお思いになる。

お出になると、人々が少し離れたところへ行ったので、小侍従が近寄って、

「昨日の文は、どうなさったのですか。今朝、院がご覧になった文の色が、似ておりました」

と申し上げると、〔宮は〕呆れたこととお思いになって、涙がただ出てくるばかりなので、〔小侍従は〕気の毒ながらも、「何とも言いようのないご様子だ」と拝見する。

「どこへお置きになったのですか。人々が参った時に、訳あり顔に近く控えようと、あれほどの慎みさえ、心の鬼に避けておりましたのに。〔院が〕お入りになった時は、少し時間が経っておりましたから、隠しなさったのだろうと、思っておりました」

と申し上げると、

「さあ、それよ。見た途端にお入りになったので、急には置く暇もなく、挟んだのを、忘れてしまった」

とおっしゃるので、〔小侍従は〕申し上げようもない。近寄って見ても、どこにあるか分からない。

「ああ、大変なこと。あの君〔柏木〕も、たいそうひどく恐れ憚って、様子だけでも漏れ聞かれることがあればと、畏まっていらしたのに。時も経たないうちに、このようなことが出てくるなんて。何もかも、幼いご様子で、人にもお会いになっていたので、長年あれほど忘れがたく、恨みを言い続けていらしたが、これほど深くお思いだったとは。どなたのためにも、気の毒なことでございます」

と、憚りもなく申し上げる。気安く若くいらっしゃるので、慣れて申し上げているのだろう。お返事もなさらず、ただ泣いてばかりいらっしゃる。たいそう苦しそうで、わずかな食事も召し上がらないので、

「このように苦しそうにしていらっしゃるのをお見捨て申し上げなさって、今はすっかり治ってしまったご治療に心を入れていらっしゃるとは」

と、辛く思い言っている。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第35冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。