ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第35帖 若菜下 / 第6場面

紫の上の憂い

あらすじ・人物・読み方

朱雀院は出家修行に専念し、女三の宮の後見を源氏に託して宮の勢いは増す。一方紫の上は、源氏の心が移ることを恐れ、出家を願いながらも言い出せずにいる。孫たちに囲まれる中、女三の宮だけが若く穏やかなままである。

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現代語で読む

入道の帝〔朱雀院〕は修行を熱心になさって、内裏のことも聞き入れない。春秋の行幸にだけ、昔を思い出されることも交じっていた。姫宮のことだけはなお思い放てず、この院〔源氏〕を大方の後見と思い申し上げ、内々の心寄せがあるよう奏上させる。〔女三の宮は〕二品になり、封戸なども増える。ますます華やかに威勢が加わる。

対の上は、こうして年月とともに方々に増す〔女三の宮への〕お覚えに、「私の身はただ一所でのおもてなしでは人に劣らないが、あまり年を重ねれば、そのお心向きもついに衰えるだろう。去る世を見果てないうちに、自分の意志で背いてしまいたい」と絶えず思い続けるが、賢しらなように思われるのではないかと遠慮され、はっきり申し上げられない。内裏の帝まで心寄せを格別に申し上げなさるので、疎かに聞かれるのも気の毒で、〔六条院へ〕お渡りになることが次第に〔二所と〕等しくなっていく。

そうなるべきこと、道理だと思いながらも、やはりそうかとだけ安からず思われるが、なお素気なく同じ様子で過ごす。春宮の次の女一の宮をこちらに特に引き取って大切にお育てする。そのお世話で、つれづれな夜離れの間も慰められた。どちらの宮も分け隔てなく、愛らしくいとしいと思い申し上げた。

夏の御方〔花散里〕は、こうした様々な孫扱いを羨んで、大将の君の典侍腹の君を切に迎えて大切にする。とても面白げで、心ばえも分より利発で大人びているので、大殿の君も可愛がる。少ない後継ぎと思っていたが末に広がり、あちこちとても多くなったのを、今はただこれを愛し世話して、つれづれも慰められた。

右の大殿〔夕霧〕が参って仕えることは昔より増して親しく、今は北の方もすっかり大人になり、あの昔の引っかかる筋を思い離れたのか、適当な折にはお渡りになる。対の上とも対面があり、理想的に言葉を交わした。

姫宮だけが同じように若く穏やかでいらっしゃる。女御の君は今は公の立場として思い放ち申し上げ、この宮をとても心苦しく、幼い娘のように思い育てる。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第35冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。