ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第38帖 鈴虫 / 第3場面

供養の広がりと宮の御処分

あらすじ・人物・読み方

御念誦堂の供養は、紫の上が用意させた法服などもあって心のこもったものとなり、内裏や山の帝からも使いが届いて、内々のことだったのが急に広がってゆく。朱雀院は、女三の宮がよそに住み離れては朝夕の世話が疎かになり本意に背くと言い、この宮を細やかに造らせ、御封の物や宝物を三条の宮の倉に納めさせる。朝夕の世話や女房のことまで、すべて自分の扱いとして急がせたのだった。

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現代語で読む

例によって、親王方なども、たいそう大勢参上なさった。御方々から、我も我もとご準備なさった供物の様子は、心が格別にこもって、所狭いほどに見える。七僧の法服など、すべての大方のことは、皆紫の上がおさせになった。綾の装いで、袈裟の縫い目まで、〔これを〕見知る人は、世に並ぶものがないと褒めたということだ。〔何と〕厄介で細々としたことの多いことよ。

講師がたいそう尊く、法会の趣旨を述べて、〔院が〕この世で栄華の盛りをお厭い離れになって、長い代々まで絶えない御契りを法華経に結びなさる、尊く深い様子を示して、ただ今の世の、才能も優れ、豊かな栄えを、ますます心を込めて言い続けたのがたいそう尊いので、皆がしおれ〔涙ぐみ〕なさる。

これは、ただ内々で、御念誦堂の〔供養の〕初めとお思いになったことだが、内裏でも、山の帝もお聞きになって、皆から御使いがある。御誦経の布施など、たいそう所狭いほどに、急に事が広がったのだった。

院がご準備させなさっていたことも、削ろうとお思いだったが、世の常ではなかったところへ、まして今風のことが加わったので、夕方の寺に置き場所もないほど、所狭い勢いになって、僧たちは帰ったのだった。

今ちょうど、〔紫の上は〕心苦しいお気持ちも添って、計り知れないほど〔女三の宮を〕大切にお世話申し上げなさる。院の帝は、この御処分の宮に〔女三の宮が〕住み離れなさるのも、最後のこととして差し支えないだろうと申し上げなさるが、「よそよそでは、〔側にいられず〕心もとなく不安でしょう。朝夕お目にかかり申し上げ、お話を伺うことを怠るようでは、本意に背いてしまうでしょう。本当に、長く続かない世にどれほど〔の間〕があるわけでもないけれど、なお生きている限りの志だけは失い尽くすまい」と申し上げなさりながら、この宮をもたいそう細やかに清らかにお造らせになり、御封の品々や、国々の御荘園・御牧などから献上される品々で、立派な様子のものは、皆あの三条の宮の御倉にお納めさせになる。またさらに〔建物を〕建て添えさせなさって、さまざまな御宝物や、院の御処分で数限りなく賜ったものなど、あちら方面の物は、皆あの宮に運び渡し、細かく厳重に整えてお置きになる。

朝夕のお世話や、多くの女房のこと、身分の上下への養育は、すべて自分の御扱いでなどと、急いでお仕えさせなさっていたのだった。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第38冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。