ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第38帖 鈴虫 / 第2場面

蓮の台の贈答歌

あらすじ・人物・読み方

朱雀院は、蓮の葉を同じ台と約束したのに露のように分かれる今日が悲しいと、香染めの扇に歌を書きつける。女三の宮は、隔てなく蓮の宿を約束してもあなたの心は住まないのではないかと返歌する。院はほほ笑みながらも、しみじみと物思いに沈む様子である。

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現代語で読む

蓮の葉を同じ台と約束しておいたのに、露のように分かれてしまう今日こそ悲しい。と、〔朱雀院は〕御硯に〔筆を〕さし濡らして、香染めの御扇にお書きになった。宮〔女三の宮〕は、

隔てなく蓮の宿に共に住むと約束しても、あなたの心はそこに住もうとしないのではないでしょうか。とお書きになると、

「言っても甲斐なく、〔私の思いを〕朽ちさせてしまわれることよ」

と、ほほ笑みながらも、なおしみじみと物思いに沈んでいらっしゃるご様子である。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第38冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。