ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第39帖 夕霧 / 第27場面

大殿の使者と宮の返歌

あらすじ・人物・読み方

致仕の大殿は、夕霧と落葉の宮の噂を聞いて嘆き、しばらく様子を見るべきだとしながらも、蔵人少将を使者として宮へ文を送る。宮は返事を書くことを拒み、女房たちに促されても亡き母を思い出して涙にくれ、ようやく歌一首だけを書き送る。少将はこれを機に宮への出入りが許される兆しだとほのめかして退出する。

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現代語で読む

〔致仕の〕大臣は、このようなことをお聞きになって、人に笑われることだとお思いになって嘆く。

「しばらくは、そのまま〔夕霧を宮に〕お会わせにならないで〔お置きなさい〕。自然と〔宮にも〕思うところがおありになるだろうものを。女がこのように引きこもっているのも、かえって軽々しく思われる行いである。よし、このように言い始めたということなら、どうして愚かにも、〔夕霧は〕ふいに帰ってしまうものか。自然と人の様子や心遣いは見えてくるだろう」

とおっしゃらせて、この宮に、蔵人少将の君を使者としてお遣わしになる。前世の因縁があるからでしょうか、あなたを心に留め置いてしみじみと思っているのに、恨めしいと聞くとはやはり、〔あなたを〕思い放つことはできそうにありません」

とある御文を、少将が持参して、まっすぐ〔宮の邸に〕入っておいでになる。

南面の簀子に円座を差し出して、〔迎える〕人々は、〔宮への〕取り次ぎを申し上げにくい。宮は、なおさらつらいとお思いになる。

この君〔蔵人少将〕は、中でもたいそう容貌がよく、好ましい様子で、のんびりと見回して、昔を思い出している様子である。

「参上し慣れている心地がして、生硬ではないのに、そのように御覧になってお許しいただけないことがありましょうか」などとだけ、ほのめかしなさる。〔宮の〕御返事はたいそう申し上げにくくて、

「私は決して書くことはできません」と〔宮が〕おっしゃると、

「〔大殿の〕御心遣いまでも隔てて若々しい〔あしらいをする〕ようです。代筆の者を書かせて、せめて申し上げるべきではありませんか」と、〔女房たちが〕集まって申し上げさせると、〔宮は〕まず泣き出して、「亡き母上がいらっしゃったなら、どれほど気が利かないとお思いになりながらも、罪を隠してくださったでしょうに」とお思い出しになるにつれて、涙だけが辛さに先立つ心地がして、〔返事を〕お書き送りになれない。

どういうわけで、世に数にも入らないこの身ひとつを、辛いとも思い、悲しいとも聞いてくださるのでしょうとだけ、お思いのままに、書き閉じもなさらない様子で、押し包んでお出しになった。少将は、人々と物語をして、

「時々お控えしますが、このような御簾の前は、手がかりのない心地がいたしますが、今からは縁がある心地がして、常に参上しましょう。内外などもお許しいただけるはずの、長年の〔思いの〕しるしが現れたような心地がいたします」などと、〔思いありげな〕様子を見せて置いて退出なさった。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第39冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。