第39帖 夕霧 / 第28場面
典侍の歌と大勢の君達
あらすじ・人物・読み方
宮の心よからぬ様子に夕霧が思い惑う一方、大殿の嘆きは日ごとに深まる。藤典侍は宮へ文を送って歌を贈り、宮も返歌を返す。かつて人知れず思いを寄せられた典侍との仲は今は疎遠になったが、夕霧と雲居雁の間には合わせて十二人の君達が生まれ、いずれも優れていることが語られる。
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現代語で読む
ますます心よくない〔宮の〕御様子に、〔夕霧が〕心も浮かれて思い惑っていらっしゃるほどに、大殿の君は、日が経つにつれて、お嘆きになることが多い。〔藤〕典侍が、このようなことを聞くと、
「私をいつもお許しにならない者とおっしゃるそうなのに、このように侮りにくいことも出来してしまったものを」と思って、文などは時々〔宮へ〕差し上げると、〔宮も〕お話し申し上げたりした。
数に入る身であれば、身に沁みて知られたでしょうに、世の辛さを、人のためにも濡らす袖であることよ〔宮はこの歌を〕気取りのようだとは御覧になるが、しみじみとした折の手持ち無沙汰に、「あの人も決してただごととは思うまい」とお思いになる片思いが、〔典侍に〕付いてしまったのである。
人の世の辛さをしみじみと見てきましたが、自分の身に代わろうとは思ってもいませんでしたとだけある〔返歌〕を、〔典侍は宮が〕お思いになったままだと、しみじみと見る。
この〔夕霧〕は、昔、〔雲居雁との〕御仲が絶えていた頃には、この内侍だけを、人知れず思い留めていらっしゃったが、事が改まって〔雲居雁と復縁して〕後は、たいそうまれにしか〔訪れず〕、冷淡さが増していらっしゃるものの、さすがに君達は大勢になっていた。
この〔雲居雁の〕御腹には、太郎君、三郎君、五郎君、六郎君、中の君、四の君、五の君がいらっしゃる。内侍〔の腹〕には、大君、三の君、六の君、次郎君、四郎君がいらっしゃった。全部で十二人のうちに、不完全な者はなく、たいそう美しい様子に、それぞれ育っていらっしゃった。
内侍腹の君達こそ、容貌が美しく、心遣いに才気があって、皆優れていた。三の君と次郎君は、東の御殿で、特に大切にお世話申し上げていらっしゃる。院〔源氏〕も見慣れていらっしゃって、たいそう可愛がっていらっしゃる。
この御仲のことは、言いようがなく〔睦まじい〕、ということだ。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第39冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。