ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第41帖 幻 / 第1場面

春のはじめ、兵部卿宮との梅の贈答

あらすじ・人物・読み方

紫の上を失った源氏は、春の光にも悲しみが改まることなく御簾の内に籠もり、訪れた蛍兵部卿宮とだけ打ち解けて対面する。源氏は紅梅に寄せて、賞でる人もない宿へ春が訪れたことを詠み、宮は香りを慕って来た甲斐のなさを返歌に詠む。

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現代語で読む

春の光をご覧になるにつけても、ますます心が暮れ惑うようにばかり〔お感じで〕、〔源氏の〕お心ひとつには、悲しさが改まるはずもないのに、表向きは、いつものように人々が参上したりするけれど、〔源氏は〕ご気分がすぐれない様子に振る舞われて、御簾の内側にだけいらっしゃる。兵部卿宮〔蛍兵部卿宮〕がお渡りになった時にだけ、ただ打ち解けた形で対面なさろうとして、〔源氏は宮へ〕お便りを申し上げなさる。私の宿には花を賞でる人もいないのに、どうして春が訪ねて来たのでしょうか。

宮〔蛍兵部卿宮〕は、思わず涙ぐまれて、梅の香りを慕って来た甲斐もなく、ただ普通の花の便りと言ってよいものでしょうか。

紅梅の下へ歩み出られた〔宮の〕ご様子がたいそう親しみ深いので、これよりほかに〔花を〕賞でるべき人はいないのだろうか、と〔源氏は〕ご覧になる。花はほのかに咲きかけて、趣のあるほどの香りである。管弦のお遊びもなく、いつもと変わったことが多い。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第41冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。