ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第41帖 幻 / 第16場面

仏名と導師の贈答

あらすじ・人物・読み方

仏名の法会で、源氏は今年限りと思い導師を格別にもてなす。雪の中の梅を前に、導師と源氏は歌を贈答し、老いと命のはかなさを詠み合った。

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「仏名の法会も、今年限りだろう」とお思いになるためか、いつもよりも特に、錫杖の音などがしみじみと感じられる。行く末長くあることを請い願うのも、仏がお聞きになることを思うと、傍らで聞くのも痛々しい。

雪がひどく降って、すっかり積もってしまった。導師が退出するのを、御前に召して、盃などを、常の作法よりも格別にあしらわせなさって、特に禄などをお与えになる。長年久しく参上し、朝廷にもお仕えして、〔源氏が〕見慣れていらっしゃる導師の、頭が次第に白くなって伺候しているのも、しみじみと感じられる。例年のように、宮方や上達部などが、多く参上なさっている。

梅の花が、わずかに色づき始めて雪に映えている頃が趣深いのを、管弦の遊びなどもありそうだけれど、なお今年までは、楽の音もむせび泣くようなお気持ちでいらっしゃるので、時節に応じたものをお朗誦なさるなどばかりをおさせになる。

そういえば、導師が盃のついでに、春まで生きられる命とも知らないのに、雪の中で色づく梅を、今日は髪に挿そう。〔源氏の〕お返し〔の歌〕、千年の春を見るべき花と祈っておいたのに、私の身は雪とともに老いてしまった。人々が多く詠み残したが、〔ここには〕漏らした。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第41冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。