第43帖 紅梅 / 第11場面
中の君への文と返歌
あらすじ・人物・読み方
匂宮は中の君を身近に拝見したいと願い続け、紅梅の贈答をうれしい機会として、若君を通じて中の君へ歌を届ける。中の君は心ときめかせながらも、心を許さない返歌を返し、若君はもどかしく思う。
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現代語で読む
かえってほかの姫君方とはお会いなどして、例の兄弟同然の間柄ながら、幼心にもたいそう重々しく理想的でいらっしゃる〔中の君の〕ご様子を、「甲斐のある形で拝見したいものだ」と〔匂宮が〕思い続けていたところ、春宮の御方〔大君〕がたいそう華やかに遇されていらっしゃるにつけても、同じ姉妹のこととは思いながら、ひどく物足りなく残念なので、「せめてこの宮〔中の君〕だけでも、身近に拝見したいものだ」と思い続けていたところ、うれしい花〔紅梅〕の機会が訪れたのである。
これは〔匂宮の返歌は〕、昨日の〔夕霧の歌への〕お返事なので、〔若君が父の大納言に〕お見せ申し上げる。
「〔匂宮は〕憎らしいことをおっしゃるなあ。あまりに色めいた方面に熱心でいらっしゃるのを、お許し申し上げないとお聞きになって、右の大臣〔夕霧〕は、われらが拝見する限りでは、たいそうまじめに、お心をお鎮めになるのが面白いことです。浮気な人とするには十分すぎるご様子を、無理にまじめぶりなさっても、見所は少なくなるでしょうに」
などと〔若君が〕陰で噂して、今日も〔大納言が若君を内裏へ〕参上させなさると、また〔匂宮が〕、もとの香のようにかぐわしい君の袖に触れたなら、花でさえ比べようのない名を散らしてしまうでしょう。と、たいそう色めいたことだ。ああ、畏れ多いことよ」
と、〔若君は中の君に〕まじめに申し上げた。〔中の君は〕本当に言い寄ろうという思いがあるのだろうかと、さすがにお心をときめかせなさって、花の香を匂わせる宿へ尋ねて行けば、色めいたことと人が咎めるでしょう。などと、なお心を許さずお答えになったのを、〔若君は〕もどかしく思っていらっしゃった。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第43冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。