第43帖 紅梅 / 第6場面
若君の笛と中の君の爪弾き
あらすじ・人物・読み方
宿直姿で参った若君を夕霧はたいそう美しく思い、麗景殿への言づけを託して笛を吹かせる。若君が双調を上手に吹くと、夕霧は中の君に爪弾きの合奏を促す。中の君がほんの少し掻き鳴らす中、夕霧は東の端近くで香る紅梅に目を留める。
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現代語で読む
若君が、内裏へ参ろうと、宿直姿で参りなさったのが、わざわざ整えた美しいみづらよりも、たいそう趣深く見えて、〔夕霧は〕この上なく可愛らしいとお思いになった。〔夕霧は若君に〕麗景殿へのお言づけを申し上げなさる。
「〔麗景殿に〕お譲り申し上げて、今夜も参ることができません、具合が悪くて、などと申し上げよ」とおっしゃって、「笛を少しお吹きなさい。どうかすると御前〔帝〕の演奏会に召し出されるのが、傍らで見ていて気の毒ですよ。まだたいそう幼い笛の音なのに」
と〔夕霧は〕微笑んで、〔若君に〕双調を吹かせなさる。〔若君が〕たいそう見事にお吹きになると、
「下手でなくなりつつあるのは、この辺りで自然と合奏の呼吸を覚えるからですよ。さあ、〔中の君よ、〕掻き合わせをなさい」
と〔夕霧が中の君を〕責めるように申し上げなさると、〔中の君は〕つらいとお思いの様子ながら、爪弾きでたいそうよく合わせて、ほんの少し掻き鳴らしなさる。皮笛は、未熟ながらも馴れた音を立てて〔響き〕、この東の端に、軒近くの紅梅がたいそう趣深く香っているのを〔夕霧は〕ご覧になって、
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第43冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。