第49帖 宿木 / 第12場面
第三夜の宴
あらすじ・人物・読み方
六の君の婚儀の第三夜の宴が催され、后の宮への見舞いも行われる。
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現代語で読む
その日は、后の宮が苦しそうでいらっしゃると聞いて、誰も彼も参内なさったが、御風邪でいらっしゃるので、格別のこともおありでないと聞いて、大臣〔夕霧〕は昼に退出なさった。中納言の君〔薫〕をお誘い申し上げて、一台の御車に相乗りしてお出になった。
「今宵の儀式は、どうなるだろう。美しさを尽くそう」と〔夕霧は〕お思いらしいが、限度があるだろうよ。この君〔薫〕も、気が置ける方だが、親しい方の評判では、自分の側にまたそのような人もいらっしゃらず、祝宴の引き立て役にするには、心が格別でいらっしゃる方だからだろう。〔薫が〕いつもと違って忙しく参上なさって、他人の身の上と見なしたことを残念ともお思いにならず、何やかやと心を合わせてお世話なさるのを、大臣は、人知れず少し妬ましくお思いだった。
宵が少し過ぎた頃に〔宮が〕おいでになった。寝殿の南の廂の、東に寄って御座所を差し上げた。御膳の台が八つ、いつもの御皿など、きちんとして美しく、また、小さい台二つに、花足の御皿なども、新風に用意させなさって、餅を差し上げなさった。珍しくもないことを書き置くのも気が利かないことだ。
大臣がお渡りになって、「夜がひどく更けました」と、女房を通じて〔席に着くよう〕お勧め申し上げなさるが、〔六の君は〕ひどく乱れた様子で、すぐにはお出にならない。北の方の御兄弟の左衛門督、藤宰相などだけが伺候なさっている。
やっとお出になった〔六の君の〕御様子は、とても見る甲斐がある気がする。主人の頭中将が、盃を捧げて御食事をお勧めする。次々のお盃を、二度、三度と〔宮は〕お召しになる。中納言〔薫〕がひどくお勧めになるので、宮は少し微笑みなさった。
「厄介な場所を」
と、自分にふさわしくない場所だと思って言ったのを、〔宮は〕思い出されたようである。しかし、知らない様子で、とても真面目でいらっしゃる。
〔宮は〕東の対にお出になって、お供の人々を歓待なさる。評判のよい殿上人たちがとても多かった。
四位の六人には、女の装束に細長を添えて、五位の十人には、三重襲の唐衣、裳の腰も皆違いがあるようにする。六位の四人には、綾の細長、袴など〔を賜った〕。一方では、限度のあることを物足りなく〔夕霧が〕お思いなので、品物の色や仕立てなどに、美しさを尽くしなさった。
召次や舎人などの中には、度を越すほど立派なのもあった。なるほど、このように賑やかで華やかなことは、見る甲斐があるので、物語などに、真っ先に言い立てたのだろうか。しかし、詳しくは数え上げられなかったとかいうことだ。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第49冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。