第49帖 宿木 / 第13場面
宴の後の薫
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現代語で読む
中納言殿〔薫〕の御前駆の中に、あまり評判が鮮やかでない者か、暗がりの紛れに立ち混じっていたのだろうか、帰ってきて嘆いて、
「わが殿は、どうしておとなしく、この殿〔夕霧邸〕の御婿におなりにならないのだろう。つまらない御独り住まいだよ」
と、中門のあたりでつぶやいたのを〔薫が〕聞きつけて、おかしくお思いになった。夜が更けて眠いのに、あの歓待された人々は、気持ちよさそうに酔い乱れて寄り臥してしまっただろうと、羨ましいようである。
君〔薫〕は、〔部屋に〕入って臥せなさって、
「決まりの悪いことだな。仰々しい様子の父親〔夕霧〕が出て座っていて、縁遠くない仲ではあるが、あちこちに火を明るく掲げて、お勧め申し上げる盃などを、〔宮は〕とても無難にお受けになったようだったな」
と、宮の御様子を、無難だったと思い出し申し上げなさる。
「なるほど、自分でも、よいと思う娘を持っていたら、この宮をおいて申し上げて、内裏にさえ参らせなかっただろう」と思うと、「誰も彼も、宮に差し上げようと志していらっしゃる娘は、やはり源中納言〔薫〕にこそと、それぞれ言い習っているらしいのは、自分の評判も残念なものではないようだな。それにしても、ひどく世間ずれせず、古めかしいものを」などと、〔薫は〕得意な気持ちになる。
「内裏〔帝〕の御意向があることを、本当にお決めになったら、このようにばかり億劫に思っていたら、どうしたらよいだろう。面目なことではあっても、どうだろうか。どうだろう、亡くなった君〔大君〕にとてもよく似ていらっしゃったら、嬉しいだろう」と自然に思い寄られるのは、やはりまったく無関心ではない心のようである。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第49冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。