ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第49帖 宿木 / 第11場面

婚儀の夜と後朝

あらすじ・人物・読み方

匂宮と六の君の婚儀が執り行われる。後朝の文の歌が交わされ、匂宮は二条院へ帰る。

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現代語で読む

宮〔匂宮〕は、たいそう心苦しく思われながら、華やかなお心は、どうにか立派な様子で〔六の君に〕待たれ思われたいと、心に掛けて想像して、この上なく薫きしめておられるご様子は、言いようがない。〔宮を〕待ち受け申し上げている所〔六の君〕の有様も、たいそう趣があった。その人のほどは、小柄で弱々しくなどはなく、ちょうどよいほどに釣り合っている心地がなさるのを、

「どうだろうか。重々しく鮮やかで、心づかいにしなやかな方はなく、誇らしげになどしているのだろうか。そうであればこそ、嫌なことだろう」

などとは思われたが、明らかなご様子ではないのか、お気持ちが疎かになるはずとも思われなかった。秋の夜であるけれど、〔宮の到着が〕更けてからだったからか、ほどなく明けてしまった。

〔宮は二条院へ〕お帰りになっても、対〔中の君のもと〕へはすぐにはお渡りになれず、しばらく大殿に籠もって、起きてからお手紙をお書きになる。

「〔六の君の〕ご様子は悪くはなかったようです」

と、御前にいる人々がひそひそする。

「対の御方〔中の君〕こそお気の毒だ。天下にあまねく行き渡るお心であっても、自然と圧倒されることもあるだろうよ」

などと、ただごとでもなく、皆が慣れてお仕えしている人々なので、心穏やかでなく言う者どももいて、すべて、やはり妬ましいことではあった。「お返事も、こちらで〔書くのがよい〕」と思われたが、「夜の間の気がかりも、いつもの隔たりよりはどうだろうか」と、心苦しいので、急いで〔対へ〕お渡りになる。

寝乱れたお顔立ちが、たいそう素晴らしく見所があって、〔宮が〕お入りになると、横になっているのも嫌なので、少し起き上がっていらっしゃると、ほんのり赤みを帯びた顔の色つやなどが、今朝は特に趣深い様子が増して見えるのに、わけもなく涙ぐまれて、しばらく見つめ申し上げなさるのを、恥ずかしく思われてうつ伏しておられる、髪のかかり具合や髪の様子などが、やはりとても稀なほど美しい。

宮も、少しきまりが悪いので、細やかなことなどは、すぐには言い出しなさらない顔隠しだろうか、

「なぜこのようにばかり悩ましげなご様子なのでしょう。暑い頃のことかとおっしゃったので、早くも涼しい頃を待ち出していたのに、まだ晴れ晴れしないのは、見苦しいことですよ。さまざまにさせることも、不思議と効き目がない心地がします。そうはあっても、修法はまた延ばしてこそよいでしょう。効験のある僧がほしいものです。何某僧都を、夜居にお仕えさせるのがよいでしょう」

などというようなまじめなことをおっしゃると、こうした方面にも言葉が達者なのは、好ましくなく思われたけれど、全くお答え申し上げないのも例にないので、

「昔も、人とは違う有様で、このような折はありましたが、自然とたいそうよく治るものですのに」

とおっしゃると、

「たいそうよく、爽やかであってほしい」

と微笑んで、「懐かしく愛敬のある方は、これに並ぶ人はいないだろう」とは思いながら、やはりまた、早く見たい方のことで心が焦る思いも加わっておられるのは、お気持ちが疎かでもないようであるよ。

しかし、〔中の君が宮を〕ご覧になる間は変わる区別もないのか、来世まで誓って頼みにされる事柄の尽きないのを聞くにつけても、なるほど、この世は短いらしい命を待つ間も、つらいお心に〔自分は〕見えないだろうから、「来世の約束が違うこともないかもしれない」と思うからこそ、やはり懲りずに、再び頼みにされるのだろうと言って、ひどく堪えていらっしゃるようだが、堪え切れなかったのか、今日はお泣きになった。

日頃も、「どうにかこう思っていたとお見せ申し上げまい」と、万事に紛らわしていたが、さまざまに思い集まることが多いので、それほどにも隠し通せなかったのか、〔涙が〕こぼれ始めると、すぐには留められないのを、たいそう恥ずかしく侘しいと思って、ひどく背けなさると、〔宮は〕無理に引き向けなさりながら、

「聞こえるとおりに、痛ましいご様子と見たのに、やはり隔てたお心があったのですね。そうでなければ、夜の間に〔私への〕お気持ちが変わってしまったのですか」

と言って、ご自分の御袖で〔中の君の〕涙をお拭いになると、

「夜の間の心変わりこそ、おっしゃるにつけて、推し量られてしまいました」

と言って、少し微笑んだ。

「本当に、私の君よ、幼いお物の言い方だなあ。しかし本当は、心に隈がなければ、たいそう心安いのです。ひどく言い訳をして申し上げても、たいそうはっきり分かるはずのことです。全く世の道理をお知りでないのが、可愛いものから困ったことです。よろしい、私の身に置き換えてもお考えなさい。身を心ともしない有様なのです。もし、思うような世もあるなら、人に優れた志のほどを、お知らせ申し上げるべき一節があるのです。たやすく言い出せることでもないので、命だけが〔頼りです〕」

などとおっしゃっている時に、あちら〔六の君のもと〕へ差し上げたお使いが、ひどく酔い過ぎていたので、少し憚るべき事柄を忘れて、はっきりとこの南面に参った。

海女が刈る珍しい玉藻に潜って埋もれているのを見て、人々は「その通りだ」と見る。いつの間に急いでお書きになったのだろうと見るのも、心穏やかではなかっただろうよ。宮も、無理に隠すべきではないが、〔手紙を〕差し組んでいるのはやはり気の毒なので、少しの用意があってほしいと、傍らにいるのがつらいけれど、今は仕方がないので、女房を通じてお手紙を取り入れさせなさる。

「どうせなら、隔てのない様子でもてなし通そう」と思われて、引き開けなさると、「継母の宮のお手跡のようだ」と見えるので、今少し心安くなって、そのまま置いておられた。宣旨書き〔代筆〕であっても、気がかりなことよ。

「出しゃばるようで、そばで見ていて決まりが悪いので、〔付きの者が〕お勧めはしましたが、〔六の君は〕ひどく思い悩んでいらっしゃるようでございます。

女郎花がひときわしおれて見えます。朝露がどのように置いていった名残なのでしょうか。

〔六の君は〕上品で美しく〔文を〕お書きになっていた。

「恨みがましい歌なのも厄介だな。本当は、気楽にしばらく暮らしていようと思っていた身の上なのに、思いがけないことになったものだ」

などと〔宮は〕おっしゃるが、

「またとない相手と、そのようなものと慣れ合った臣下の夫婦仲なら、このようなことの恨めしさなども、見る人は気の毒には思うでしょうが、思えばこちら〔宮のお立場〕はとても難しいのです。結局はこうなるはずのお事なのです。宮たちと申し上げる中でも、将来を世の人が特に期待申し上げている方ですから、何人も〔妻を〕お持ちになることがあっても、非難されるはずはないので、世の人も、この御方〔六の君〕をお気の毒などとは思わないでしょう。これほど重々しく大切にしてお住まわせになり、お気の毒な方〔中の君〕を並々でなくお思いになっているのが、〔中の君の〕幸せでいらっしゃいました」

と〔中の君は〕申し上げるようである。〔宮も〕ご自身の心でも、〔中の君を〕あまりに大切に扱い慣れていらっしゃるので、急によそよそしくなるのが嘆かわしいのだろう。

「このような〔夫婦の〕道を、どうして並々でなく人が大事に思うのだろうと、昔物語などを見るにつけても、他人の身の上でも、不思議に聞いて思っていたのは、なるほど並々でないことだったのだ」

と、〔宮は〕自分の身になって、何事も思い知られるのであった。

宮は、いつもより情け深く、打ち解けた様子で〔中の君を〕おもてなしになって、

「まったくお食事を召し上がらないのは、とてもよくないことです」

と言って、立派な果物を取り寄せ、また、しかるべき料理人を召して、特別に調理させなどしながら、〔食べるよう〕お勧め申し上げなさるが、〔中の君は〕まったく口をつけようとだけお思いなので、「見ていられないことだ」と〔宮が〕心配申し上げなさっているうちに、日が暮れたので、夕方、寝殿へお渡りになった。

風が涼しく、空全体が趣のある頃なので、華やかなことに心の進む宮の御性分では、ますます浮き立つお気持ちになるのに、物思いをしている人〔中の君〕の御心中は、何事につけても耐えがたいことばかりが多かった。蜩の鳴く声に、〔宇治の〕山のあたりばかりが恋しくて、

〔宇治にいたら〕何気なく聞いただろうに、蜩の声が恨めしい秋の夕暮れだこと。

〔宮は〕今宵はまだ夜が更けないうちにお出かけになるようである。御前駆の声が遠くなるにつれて、〔中の君は〕海人が釣りをするほど〔夜が更ける〕のにも、「自分ながら憎い心だわ」と、思いながら聞き臥せっていらっしゃった。〔宮が〕最初から物思いをさせなさった有様などを思い出すのも、疎ましいほどに思われる。

「この苦しいことも、どうなるのだろう。とても短命な一族なので、このような機会にでも、儚く死んでしまうのだろうか」

と思うと、「〔命は〕惜しくはないが、悲しくもあり、またとても罪深いことだともいうものを」などと、眠れないままに〔中の君は〕夜を明かしなさる。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第49冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。