ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第52帖 蜻蛉 / 第12場面

小宰相の君への贈答

あらすじ・人物・読み方

式部卿になった二の宮は小宰相の君に歌を贈り、返歌を受ける。薫もこの君に心を寄せる。

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蜻蛉・第12場面0 / 13
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二人の人の御心の内、古びず悲しく、あいにくであった御思いの盛りに掻き絶えては、ひどく悲しいので、浮薄な御心は、慰むかなど、試みなさることもようやくあった。

あの殿は、このように取り持って、何やかやと思いなさって、残りの人を育ませなさっても、なお、言い甲斐ないことを、忘れ難く思われる。

后の宮の、御軽服のほどは、なおこのようにしていらっしゃるのに、二の宮が式部卿におなりになった。重々しくて、常にしも参りなさらない。この宮は、寂しく物あはれなままに、一品の宮の御方を慰め所にしなさる。良い人の容貌をも、十分には御覧にならない、残りが多い。

大将殿の、辛うじて、ひどく忍んで語らわせなさる小宰相の君という人の、容貌なども清げだ、心映えある方の人と思われていた。同じ琴を掻き鳴らす、爪音、撥音も、人には勝り、文を書き、物うち言ったのも、由ある節を添えていた。

この宮も、年ごろ、ひどく痛い物にしなさって、例の、言い破りなさるけれど、「どうして、それほど珍しげなくはあろうか」と、心強く妬い様子であるのを、真面目な人は、「少し人より格別だ」と思われるのであった。このように物思いなさるのも見知ったので、忍び余って申し上げていた。

あはれを知る心は人におくれはしないが、物の数でない身に、消えつつ月日を経る。

代えたらば」

と、由ある紙に書いていた。物あはれな夕暮、静かなほどを、ひどくよく推し量って言ったのも、憎くない。

常なしと世を見る憂き身でさえ、人が知るほどに嘆きはしないものを。

この喜び、あはれであった折からも、ますます」

など言いに立ち寄りなさった。ひどく恥ずかしげに物物しげで、並べてこのようであるのにも慣らしなさらない、人柄もやんごとなきに、ひどく物儚い住まいであるよ。局など言って、狭く程ない遣戸口に寄りおいでなさる、傍ら痛く思われるけれど、さすがにあまり卑下してもないで、ひどく良いほどに物なども申し上げる。

「見た人よりも、これは心憎い気が添えてもあるなあ。どうして、このように出で立ったのだろう。そのような物で、我も置いたらよかった物を」

と思われる。人知れぬ筋は、かけても見せなさらない。

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底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第52冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。