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狂言「附子」 / 第1場面

留守を命じられる

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留守を命じられるをもとにした創作画
あらすじ・人物・読み方

主は用事で出かけるにあたり、太郎冠者と次郎冠者を呼び出して留守を命じる。葛桶の中の附子は、風に当たっても死ぬほどの大毒だと厳しく言い含めるが、太郎冠者は「附子」を「留守」と聞き違える。

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原文・発音の読み・現代語

現代語で読む

主「この辺りの者でございます。今日は用事があって、山一つ向こうへ参ります。二人の者を呼び出して、留守番のことを申し付けようと思います。と言って太郎冠者を呼び出し、次郎冠者も呼べと言う。いつもの通りである。

主「二人の者を呼び出すのは、ほかのことではない。用事があって山一つ向こうへ行く。二人ともよく留守番をせよ。

太郎冠者「かしこまりましたが、二人のうち一人は、なあ次郎冠者。次郎冠者「おう。二人「お供に参りましょう。

主「いや、今日は事情があって、供には連れて行かぬ。二人ともよく留守番をせよ。

太郎冠者「左様ならば、かしこまりました。主「しばらく、それは待て。二人「心得ました。

主は葛桶を持ち出して、舞台の真ん中に置く。

主「やい、こちらに附子があるのだから、そう心得よ。太郎冠者「左様ならば、二人ともお供に参りましょう。

主「お前は何と聞いた。太郎冠者「こちらに留守があるとは、仰せられませんでしたか。

主「いやいや、そうではない。附子といって、あの方から吹く風に当たってさえ死んでしまうほどの大毒だ。油断せずによく番をせよ。

次郎冠者「さっそく不審に思います。そのような大毒を、どうして表の間でお取り扱いなさいますか。

主「それには、差し支えのない呪文がある。太郎冠者「それはごもっともに存じます。

主「やがて戻ろう。二人「やがてお帰りなさいませ。主「心得た。

と言って、主は中へ入る。

太郎冠者「お出かけになった。次郎冠者「お出ましになった。太郎冠者「まず下に座っていよ。次郎冠者「心得た。

太郎冠者「さて、どう思う。いつもわしがお供に行けばお前が留守番をし、お前がお供に行けばわしが留守番をするのに、今日は二人とも留守番をせよというのは珍しいことだ。

次郎冠者「どちらにしても例の少ないことだ。太郎冠者「今日はゆっくり話そう。次郎冠者「そら。太郎冠者「どうした。次郎冠者「附子の方から風が吹いた。わしはうっかり者だ。

太郎冠者「とかくあのような物のそばにいるのは悪い。少し引いて話そう。次郎冠者「それがよかろう。太郎冠者「さあ、下に座れ。次郎冠者「心得た。

太郎冠者「さて、お前はあの附子という物を見たことがあるか。次郎冠者「わしはついに見たことがない。太郎冠者「わしもついに見たことがない。今日は幸いの留守だ。そっと見ようと思うが、どうだろう。

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底本:『和泉流狂言大成 第4巻』山脇和泉著、わんや江島伊兵衛、大正8年[1919](国立国会図書館蔵 6-364)所収「附子」。本文画像:所蔵機関の公開資料。

大正8年(1919)山脇和泉著『和泉流狂言大成 第4巻』(わんや江島伊兵衛、国立国会図書館蔵 6-364)所収「附子」(和泉流)の本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像と照合した独自編集本文です。底本の字句を残して通行字体に写し、句読点を補っています。発音の読みと独自訳を添えています。