ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

狂言「附子」 / 第2場面

附子をのぞく

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附子をのぞくをもとにした創作画
あらすじ・人物・読み方

主が出かけたあと、太郎冠者は附子を一目見ようと次郎冠者を誘う。風に当たっても死ぬという毒を、扇で風をあおぎ返しながらそっとのぞき、蓋を開けて黒い塊を見つける。誘惑に勝てず一口食べた太郎冠者は、狼狽する次郎冠者にそれが砂糖だと明かす。

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狂言「附子」・第2場面0 / 48
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次郎冠者「いや、わたしどもが、あの大毒を見ようなどということがあってよいものか。

太郎冠者「そうは言うが、ここに気がかりがある。『やい太郎冠者、お前の所には附子という物があるそうだが、どんな物だ』とお尋ねのとき、家にいながら知らないとも言えまい。幸いの留守だ、そっと見よう。

次郎冠者「いくらそうでも、あの方から吹く風に当たってさえ死んでしまうほどの大毒を、見ようなどということがあってよいものか。太郎冠者「それにはよい工夫がある。次郎冠者「どうする。太郎冠者「あの方から吹く風にさえ当たらなければよいのだから、こちらからも精を出して扇いで、そのすきに見てこよう。

次郎冠者「わしはあまり乗り気でないぞ。太郎冠者「そんなことを言わずに扇いでくれ。次郎冠者「扇ぐのは扇ぐが、気味の悪いことだ。

太郎冠者「扇げ。次郎冠者「扇ぐぞ。と言って二人は扇を広げて扇ぐ。いろいろと仕様があること。

太郎冠者「そら。次郎冠者「どうした。太郎冠者「まずひもを解いた。お前、行って蓋を取ってこい。次郎冠者「いやいや、わしはあんな毒のそばへ行くのは嫌だ。

太郎冠者「それなら、わしが行くから扇いでくれ。次郎冠者「心得た。と言って、また前と同じように声をかけて扇ぐ。太郎冠者「そら。次郎冠者「どうした。

太郎冠者「まず蓋を取った。生き物なら、取っても出てこようが、生き物でないのか、取っても出てこないわ。次郎冠者「いや、悪さをする者は必ず報いを受けるという。油断をするな。

太郎冠者「ついでに行って見てこよう。次郎冠者「また行くか。声をかけながら、次郎冠者は扇ぎ続ける。声のかけ方もいろいろある。太郎冠者「そら。次郎冠者「どうした。

太郎冠者「見たぞ。次郎冠者「何であった。太郎冠者「何かは知らぬが、黒い物がどっしりとひとかたまりあった。まずうまそうな物だ。

次郎冠者「いや、わたしどもが、あの大毒をうまそうだなどということがあってよいものか。太郎冠者「わしはあれを食べてみようと思うが、どうだろう。次郎冠者「お前は気が違ってはいないか。

太郎冠者「いや、気も違ってはいないが、附子に魅入られたのか、しきりに食べたくなった。ちょっと行って食べてこよう。次郎冠者「ああ、まず待て。太郎冠者「何だ、待てとは。次郎冠者「わしがいるからには、どこへも行かせることではないぞ。太郎冠者「そう言わずに放してくれ。次郎冠者「いやいや、放すことはならぬ。太郎冠者「放せ。次郎冠者「ならぬぞ。太郎冠者「名残の袖を振り切って、附子のそばへ歩みゆく。

と言って葛桶のそばへ行き、扇で一口すくって食べ、顔を手で押さえ、「はあ」と言って熱に浮かされたようになる。次郎冠者は走って行って太郎冠者をつかまえ、揺すってこう言う。次郎冠者「あれ、食べているようだ。死んでいなければよいが、案の定死んでしまった。やい、太郎冠者、どうした。太郎冠者「誰だ。次郎冠者「次郎冠者だが、どうした。太郎冠者「何だ、次郎冠者か。

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底本:『和泉流狂言大成 第4巻』山脇和泉著、わんや江島伊兵衛、大正8年[1919](国立国会図書館蔵 6-364)所収「附子」。本文画像:所蔵機関の公開資料。

大正8年(1919)山脇和泉著『和泉流狂言大成 第4巻』(わんや江島伊兵衛、国立国会図書館蔵 6-364)所収「附子」(和泉流)の本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像と照合した独自編集本文です。底本の字句を残して通行字体に写し、句読点を補っています。発音の読みと独自訳を添えています。