ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE
砂糖を味見する太郎冠者と扇であおぐ次郎冠者、様子を見る主。附子をもとにした創作画

狂言 / 未詳 / 室町 / 狂言の台本

附子 ぶす

留守番を任された二人と、ひと桶の「附子」。
笑いと機転の狂言へ。

いま読めます / 全5場面・無料

猛毒のはずが、甘すぎる。

留守番と、甘い誘惑。猛毒と聞かされた葛桶の中身をめぐる、太郎冠者と次郎冠者の狂言です。

主に留守を命じられた太郎冠者と次郎冠者。葛桶の附子は猛毒だと聞かされながら、太郎冠者は「附子」を「留守」と聞き違える。主の留守中、好奇心にかられた二人は、扇であおいで毒の風を避けつつ桶をのぞき、黒い塊――その正体は砂糖――を食べ尽くす。言い訳に主の秘蔵の掛物と臺天目茶碗まで壊し、主の帰宅後に泣いて言い訳を並べるが、かえって怒りを買って追い回される。狂言の台本。

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全5場面

挿絵・人物画は本文をもとにした創作イメージです。原典の図版や史料の再現図ではありません。

第1場面留守を命じられる主は用事で出かけるにあたり、太郎冠者と次郎冠者を呼び出して留守を命じる。葛桶の中の附子は、風に当たっても死ぬほどの大毒だと厳しく言い含めるが、太郎冠者は「附子」を「留守」と聞き違える。第2場面附子をのぞく主が出かけたあと、太郎冠者は附子を一目見ようと次郎冠者を誘う。風に当たっても死ぬという毒を、扇で風をあおぎ返しながらそっとのぞき、蓋を開けて黒い塊を見つける。誘惑に勝てず一口食べた太郎冠者は、狼狽する次郎冠者にそれが砂糖だと明かす。第3場面砂糖を食べ尽くす附子の正体は砂糖だった。二人は代わる代わる食べ尽くし、互いに「主人に言いつける」と脅し合っては「戲言だ」と笑う。太郎冠者は言い訳作りに、次郎冠者に主の秘蔵の掛物を破らせる。第4場面言い訳を仕込む太郎冠者は掛物に続いて臺天目茶碗も割らせ、主が帰ったら泣いていよと段取りを決める。やがて主が帰宅し、二人は申し合わせたとおり泣き出す。第5場面白状と追い込み太郎冠者は、眠気覚ましに相撲を取って掛物を破り、臺天目を割り、死のうとして附子を食べたと言い訳する。二人が口々に「何口食べても死なれない」と唱えると、主は怒って二人を追い回す。

この作品の人物

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太郎冠者

主に仕える冠者。シテを務める。「附子」を「留守」と聞き違え、留守中は好奇心を抑えきれず、次郎冠者を言いくるめて桶の砂糖を食べ尽くし、主の秘蔵の掛物と臺天目茶碗を壊す言い訳まで仕込む。

次郎冠者

主に仕える冠者。小アトを務める。附子を恐れてためらうが、太郎冠者に押し切られて砂糖を分け合い、掛物を破って茶碗を割る役目を負う。

主

太郎冠者・次郎冠者の主。アトを務める。用事で出かける際、葛桶の附子は風に当たっても死ぬほどの大毒だと厳命して留守を託すが、帰宅すると秘蔵の掛物と臺天目が台無しになっている。

出典・本文の注記

底本:『和泉流狂言大成 第4巻』山脇和泉著、わんや江島伊兵衛、大正8年[1919](国立国会図書館蔵 6-364)所収「附子」。本文画像:所蔵機関の公開資料。

大正8年(1919)山脇和泉著『和泉流狂言大成 第4巻』(わんや江島伊兵衛、国立国会図書館蔵 6-364)所収「附子」(和泉流)の本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像と照合した独自編集本文です。底本の字句を残して通行字体に写し、句読点を補っています。発音の読みと独自訳を添えています。

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