ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第2帖 帚木 / 第1場面

光源氏の名と語り手のためらい

あらすじ・人物・読み方

語り手は源氏の恋の秘密まで伝わることに口を挟み、その慎重な性格と、人に言えない恋の癖を語ります。

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光源氏とは、名前ばかりが大げさで、その名誉を損なうような落ち度も多いのに、こんな恋の話まで、なおさら、後の世にまで伝えられて、浮ついた人だという評判を残すのでは、と、〔源氏が〕隠していた秘密の出来事まで、語り伝えた人の、なんと意地の悪いことか。

実は、〔源氏は〕ひどく世間を気にして、まじめに振る舞っていたので、優美で、趣のあることもなく、〔恋の物語で知られる〕交野の少将には、笑われたことだろう。

まだ中将などと呼ばれていたころは、宮中でばかり過ごすようにして、〔妻の実家である〕大殿の邸へは、とぎれとぎれに帰っていらっしゃるのを、人知れぬ恋で心が乱れているのか、と疑われることもあったが、それほど浮ついて、ありふれた、軽率な好色ぶりなどは、もともと好まない性質だった。

ところが時には、ひたすらその反対に、思い悩まずにはいられない相手を、心から離さない癖があり、それが困ったもので、あってはならない振る舞いも交じるのだった。

底本:北村季吟『湖月抄』延宝元年刊・国立国会図書館所蔵 本別3-1 [2]。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。