ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第2帖 帚木 / 第21場面

障子越しに聞く、源氏の噂

あらすじ・人物・読み方

源氏が西側の人の気配へ耳を澄ませると、若い女性たちが源氏の噂を語っています。秘めた思いが漏れないかと胸を騒がせますが、話は朝顔へ贈った歌のことでした。

下の同じ枠で原文・発音の読み・現代語を一節ずつ確認できます。どの読み方から始めても読了を記録できます。

表示と音声の設定

任意の復習へ

現代語で読む

衣の触れる音が、さらさらと聞こえ、若い女たちの声も、悪くない。それでも、忍びやかに笑ったりする気配は、どこか、気取ったところがある。

格子を開けていたのだが、紀伊守が、「気が利かない」と小言を言って、下ろしてしまったので、灯した火の光が、障子の紙を透かして漏れている。その辺りへ、静かにお寄りになり、見えるだろうか、とお思いになるが、隙間もないので、しばらく、お聞きになっていると、すぐ近くの母屋に、集まって座っているらしい。

ひそひそと語ることを、お聞きになると、ご自分のことらしい。「とても、まじめらしく振る舞って、早くから、立派な結婚相手がお決まりになっているのは、つまらないことでしょうね。でも、それ相応の物陰には、うまく隠れてお出歩きになるそうですよ」

などと言うのにつけても、あるお思いばかりが、お心にかかっておられるので、まず、はっと胸がつぶれて、こんな機会にでも、誰かが口外するのを、聞きつけた時にはどうしよう、などと、お感じになる。特別なことはなかったので、途中で聞くのをおやめになった。

式部卿宮の姫君へ、朝顔をお贈りになった時の歌などを、少し口を曲げて、語るのも聞こえてくる。遠慮のない様子で、歌を口ずさんだりも、よくするものだなあ。やはり、実際に会えば、思ったほどではないのだろう、とお思いになる。

紀伊守が出て来て、灯籠を掛け添え、火を明るくかき立てるなどして、果物などだけを、差し上げた。「帳を垂らした先の、もてなしは、どうなっているのかな。その方面の楽しみもないのであれば、気の利かない主人ということだろう」とおっしゃるので、どうすればよいかも、理解しきれず、恐縮して控えている。

底本:北村季吟『湖月抄』延宝元年刊・国立国会図書館所蔵 本別3-1 [2]。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。