ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第2帖 帚木 / 第26場面

小君を、便りの頼りにする

あらすじ・人物・読み方

源氏は女の心中を思いやり、紀伊守に少年をそばで使いたいと伝えます。女は親の考えと違う結婚を嘆いている、とも聞きます。

下の同じ枠で原文・発音の読み・現代語を一節ずつ確認できます。どの読み方から始めても読了を記録できます。

表示と音声の設定

任意の復習へ

現代語で読む

邸に、お帰りになっても、すぐには、まどろむこともできない。また逢える方法もないのに、それ以上に、あの人の思っている、心の中は、どうなのだろう、と、気の毒に、思いやられる。

格別に、優れたところはないけれど、見苦しくなく、たしなみも、身についていた、中ほどの家柄の人であったなあ。くまなく見てきた人の、言っていたことは、本当だ、と、自然に、思い合わせられるのだった。このごろは、左大臣邸にばかり、いらっしゃる。

やはり、まるで縁が切れたように、思っているだろうことが、気の毒で、お心にかかり、つらく、お困りになって、紀伊守を、お呼びになった。「先日いた、中納言の子は、もらえようか。かわいらしく見えたから、そばで使う者にしよう。帝にも、私から、差し上げよう」とおっしゃるので、

「たいそう、ありがたい、お申し付けでございます。姉である人に、話してみましょう」と申し上げるにつけても、源氏は、胸が、どきりとするが、伝えよ、とおっしゃる。「その姉は、あなたの弟でも、産んでいるのか」「そのようなことは、ございません。この二年ほど、こうして暮らしておりますが、

親の考えと、違ってしまった、と、思い嘆いて、気の晴れない様子だと、聞いております」「気の毒なことだ。悪くない評判を、聞いていた人だよ。本当に、風情のある人なのか」とおっしゃるので、「悪くは、ございませんでしょう。離れて、よそよそしくしておりますから、世間の言い草どおり、親しくしておりません」と申し上げる。

そうして、五、六日たって、この少年を、連れて参った。

底本:北村季吟『湖月抄』延宝元年刊・国立国会図書館所蔵 本別3-1 [2]。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。