ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第2帖 帚木 / 第3場面

文箱をめぐる軽口

あらすじ・人物・読み方

静かな雨の夜、頭中将は源氏の手紙を見たがります。源氏は隠そうとしますが、二人の会話は女性についての話へ移っていきます。

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所在なく雨が一日中降り続き、しんみりした宵の雨の中、殿上の間にも人がめっきり少なく、源氏の宿直所も、いつもよりのんびりした感じだった。灯火の近くで、手紙などをご覧になるついでに、そばの厨子にあった、色とりどりの紙の手紙を、取り出したところ、中将が、どうしても見たいとせがむので、「差し支えないものなら、少しは見せよう。見られては困るものもあるかもしれないから」と、〔源氏が自由に見るのを〕許さないので、

「そんな、気を許して書いてあって、恥ずかしいと思われるようなものこそ、見てみたいのです。ありきたりな、普通の手紙なら、取るに足らぬ私でも、自分の身のほどなりに、やり取りして見ることはできます。それぞれの女性が、恨めしく思った時や、あなたを待つ夕暮れなどの手紙にこそ、見どころがあるでしょう」と、恨み言を言う。

〔中将が思うに〕大切で、ぜひとも隠しておきたいような手紙は、こんな、無造作な厨子などに、散らかしておかれるはずもない。奥深く隠しておいでのようだから、これは二番手の、気軽に扱える相手からのものだろう。

手紙を少しずつ見て、「ずいぶん、さまざまな手紙があるものですね」と言い、当て推量で、あの人ですか、この人ですか、と尋ねるうちに、言い当てることもある。見当違いの人にまで思いを巡らせて疑うのを、源氏はおもしろくお思いになるが、言葉少なに、何かと話をそらしては、手紙を取り返してしまった。

「あなたの所にこそ、手紙がたくさん集まっているでしょう。少し見たいものだ。そうしたら、この厨子も気持ちよく開けられるのに」と源氏がおっしゃると、「ご覧に入れておもしろいものなど、なかなかございません」と、中将はお答えになり、その話のついでに、

底本:北村季吟『湖月抄』延宝元年刊・国立国会図書館所蔵 本別3-1 [2]。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。