第2帖 帚木 / 第6場面
埋もれた女性への関心
あらすじ・人物・読み方
名門の女性なら立派でも当然だという話から、知られずに暮らす女性の意外な魅力へ関心が移ります。語り手は、話を聞く源氏の姿にも目を向けます。
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現代語で読む
「生来の家柄と、今の世の評価とがそろった、高貴な家の女性で、家での扱いや本人の様子が見劣りするなら、言うまでもなく、何をして、こんなふうに成長したのか、と、どうにもふがいなく感じられるでしょう。〔その条件に〕ふさわしく優れていても、当然で、これこそ、そうあるべきことだと思われ、珍しいことだと、心を動かされることもないでしょう。私が手を伸ばせるほどの身分ではありませんので、最上の部類は、ひとまず置いておきます。
さて、この世にいるとも人に知られず、寂しく荒れた、草深い家に、思いがけず、かわいらしい女性が人知れず暮らしているとしたら、この上なく、珍しく感じられるでしょう。どうしてこんな所に、と不思議に思うからこそ、思い描いたのと違うことが、不思議と心に留まるのでしょう。
父親が年老い、気難しそうに、ひどく太っていて、兄弟の顔立ちも、愛想がなく、想像しても、特に期待できるようなことのない奥の部屋で、〔その娘が〕ひどく誇り高く、ちょっとしてみせたことにも、奥ゆかしさが感じられる一面があれば、どうして、思いがけず、心を引かれることが、ないでしょうか。特に欠点のない女性を選ぶ、ということには及ばなくても、それはそれで、見過ごしがたいものを」と言って、式部丞の方を見ると、
式部丞は、自分の姉妹たちに、よい評判があるので、それを思っておっしゃるのだろうか、と、内心で疑うのか、何も言わない。さて、上の部類だと思う人にさえ、難点がありそうな世の中だ、とは、源氏はお思いになることだろう。
白い、柔らかな衣の上に、直衣だけを、くつろいだ様子でお召しになり、紐なども、結ばずに放って、寄りかかって横になる源氏の、灯火に映る姿は、いっそうすばらしく、女性になって、お目にかかりたいほどである。このお方のためには、最上の女性を選び出しても、まだ十分でないように、お見えになる。
底本:北村季吟『湖月抄』延宝元年刊・国立国会図書館所蔵 本別3-1 [2]。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。