ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第4帖 夕顔 / 第3場面

秋の訪れと六条

あらすじ・人物・読み方

秋を迎え、君の通いが途絶えがちになった人々の思い。

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現代語で読む

秋にもなった。〔君〕は、自ら招いたことながら、思い悩んで心を乱されることがいろいろあって、大殿へは訪れの間を空けがちで、〔大殿の方々〕は恨めしくばかりお思い申し上げていらっしゃる。

六条のあたりでも、打ち解けにくかったお気持ちを〔君が自分の方へ〕向けさせ申し上げた後で、一転して並々の扱いになってしまうようでは、気の毒なことだ。けれど、まだよそよそしい間柄だったときの心の迷いのような、ひたむきさがないのも、どうしたことかと見えた。

女は、何事も度を越すほど深く心におさめなさるお気性で、年齢も似つかわしくなく、人が漏れ聞くとしたらと、いっそう、こんなにつらい、〔君が〕訪れない夜の目覚めに、思いに涙をしぼられることは、とても寂しい。

霧のたいそう深い朝、〔君は退出を〕ひどく促されなさって、眠そうな様子でため息をつきながら出ていらっしゃるのを、中将のおもとが、格子を一間分開けて、

〔中将のおもとが女に〕お見送りなさいませと言いたげに、御几帳を引きやったので、〔女は〕頭をお上げになって、外をご覧になる。

前栽がさまざまに入り乱れているのを、通り過ぎがたく、しばらくたたずんでいらっしゃる様子は、なるほど、たとえようもない。〔君が〕廊のほうへいらっしゃると、中将の君がお供に参る。

紫苑色の、季節にかなった薄物の裳を、くっきりと結び上げた腰つきは、すっきりとして優美だ。

〔君〕は振り返り、隅の間の高欄にしばらく〔中将の君を〕引き寄せて座らせなさる。〔中将の君の〕気を緩めないふるまいや、髪の垂れた端を、〔君は〕心外でもあるとご覧になる。

咲く花に〔心を〕移すという評判は隠しているけれど、折らずに通り過ぎるのはつらい、今朝の朝顔よ。

「どうしたらよいだろう」と言って、〔君が中将の君の〕手をお取りになると、〔中将の君は〕たいそう慣れた調子で、すぐに、

朝霧の晴れ間さえ待たないご様子で、花に心をお留めになった、とお見受けします。

と、〔中将の君は〕個人的なことではない言い方で申し上げる。

愛らしい、付き添いの童の姿は感じがよく、念入りに整えたらしい指貫の裾を、露にぬれそうに花の中にまぜて、朝顔を折って参る様子などは、絵に描きたくなるようだ。

ひととおりちらりとお見かけする人でさえ、〔君に〕心を引きつけられ申し上げない者はいない。風情を知らない山の民でも、花の陰にはやはりしばらく休みたいものなのだろうか。

このお姿の光を拝見する人々は、それぞれの身分に応じて、自分がかわいく思う娘をお仕えさせたいと願い、あるいは、まずまずだと思う姉妹などがいる人は、低い身分でも、やはりこのおそばにお仕えさせようと思いつかない者はいなかった。

まして、折にかなったお言葉も親しみ深いご様子を拝見する人のうち、少しでも物の心がわかる者が、どうして並々にお思い申し上げるだろう。

明け暮れ、すっかり打ち解けてはおいでにならないのを、〔人々は〕もどかしく思っているようだ。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝1 [1673] 跋・国立国会図書館蔵 本別3-1。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。