ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第6帖 末摘花 / 第1場面

夕顔を忘れられず

あらすじ・人物・読み方

源氏は夕顔を忘れられず、新しい相手を探す一方で、空蝉や軒端荻にも思いを向けます。

下の同じ枠で原文・発音の読み・現代語を一節ずつ確認できます。どの読み方から始めても読了を記録できます。

表示と音声の設定

任意の復習へ

現代語で読む

思い続けてもなお思いの尽きなかった夕顔の、露のようにはかない命に後れ、取り残された時の気持ちを、年月が過ぎても、〔源氏は〕お忘れにならない。

どちらのお方も、気を許さず、気取って心を奥に隠しているお方々の、張り合うようなご様子につけて、身近で親しみやすかった〔夕顔の〕愛しさに並ぶものはなく、恋しくお感じになる。

「何とか、大げさに身構えるほどの評判もなく、とてもかわいらしく、気兼ねもしなくてよいような人を見つけたいものだ」と、こうして懲りずに思い続けていらっしゃるので、少しでも趣があると噂されるお宅で、お耳に留まらない所はなく、あるいはよい相手かもしれない、と心を寄せるほどの様子があるお宅には、一筆でも、それとなくお便りをなさるようだが、お気持ちに従わず、よそよそしく離れている人は、めったにいないというのも、まったく見慣れたことである。

態度を崩さず、気強くしている人も、たとえようもなく情愛に乏しい生真面目さなどで、あまりに物事をわきまえないように〔見せながら〕、ずっとそのまま押し通すわけではなく、すっかり態度を崩してしまい、ごくありきたりな関係に落ち着いてしまう人もいるので、〔源氏が〕言いかけておやめになった相手も多かった。

なるほど、あの空蝉のことを、何かの折には、しゃくに障ると思い出される。萩の葉を揺らせそうな風のように、〔便りを届ける〕よい機会がある時には、〔便りを送って〕呼びかけなさる折もあるのだろう。

〔軒端荻の〕明かりの下で身なりを乱していた姿は、またそんな姿でも、見たいとお思いになる。総じて、すっかり跡形もなく人を忘れることは、おできにならなかった。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第6冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。