第6帖 末摘花 / 第2場面
命婦が語る姫君
あらすじ・人物・読み方
大輔の命婦の話から、源氏は故常陸親王の姫君の暮らしと琴に関心を持ちます。
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現代語で読む
左衛門の乳母という人で、大弐の尼のすぐ次とお思いになっていた方の娘が、大輔の命婦と呼ばれて、宮中にお仕えしている。皇室の血を引く、兵部大輔を務める人の娘であった。たいそう恋愛を好む若い女性で、源氏もお呼びになって、用をお命じになることなどがある。
母は筑前守の妻になって任地へ下ってしまったので、〔命婦は〕父君の家を実家として、宮中との間を行き来している。
亡き常陸親王が晩年にもうけて、たいそう大切に育てていらっしゃった姫君が、心細く取り残されて暮らしていらっしゃることを、〔命婦が〕何かのついでにお話し申し上げると、「お気の毒なことだね」と言って、〔源氏は〕詳しくお尋ねになる。
「ご気性やお顔立ちなど、詳しいことまでは存じません。引っ込んで、人との付き合いを遠ざけてお暮らしなので、寂しい宵などに、隔ての向こうからお話し申し上げるのです。琴を、心の通う話し相手とお思いなのです」と申し上げると、
「三つの友のうち、もう一つは、よくないのだろうか。私にも聞かせてほしい。父宮が、そういう方面で、とても趣のある方でいらっしゃったので、ありきたりな弾き方ではないだろうと思う」と、お話しになる。
「そのように、お聞きになるほどのものでは、ないのではございましょうか」と言うと、「ずいぶん、思わせぶりだね。このごろの朧月夜に、ひそかに出かけよう。〔お前も里へ〕退出しておくれ」とおっしゃるので、〔命婦は〕厄介だと思うけれど、宮中のあたりも穏やかな、春の所在なさにまかせ、退出した。
父の大輔の君は、別の所に住んでいた。こちらへは、時々通っていた。命婦は、継母のいる方には住み着かず、姫君のお住まいの方と親しく付き合って、こちらへ来ていたのだった。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第6冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。