ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第6帖 末摘花 / 第4場面

透垣にいた男

あらすじ・人物・読み方

姫君の気配を知ろうとする源氏は、透垣の陰に先客を見つけます。その男は、宮中から源氏の後をつけてきた頭中将でした。

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現代語で読む

寝殿の方で、人の様子をうかがえるかもしれないとお思いになって、そっと、外へ出なさる。透垣が、ほんの少し折れ残っている、物陰の方へお寄りになると、先ほどから立っている男がいた。だれだろう、ここに思いを寄せる色好みの男がいたのだな、とお思いになって、物陰に沿って、お隠れになると、〔その男は〕頭中将だった。

この夕方、宮中から一緒に退出なさった〔源氏が〕、そのまま、大殿にも寄らず、二条院でもなく、別の方へ離れていらっしゃったのを、どちらへ行くのだろうと、〔中将は〕ただ事ではなく思い、自分にも行く所はあるけれど、後をつけて、様子をうかがっていたのだった。粗末な馬に乗り、狩衣姿の無造作な格好で来ていたので、〔源氏は〕それとお見分けにならなかった。それでも、こうして意外な所へ入ってしまわれたので、〔中将が〕わけがわからないと思っていたところ、楽器の音を耳にして、ここに立っていたが、帰りに出ていらっしゃるだろうかと、ひそかに待っていたのだった。

源氏の君は、だれなのか、お見分けになれず、自分だと知られまいと、抜き足で歩み去ろうとなさると、〔中将が〕さっと近寄って、「私を振り捨てておいでになったのがつらく、お見送り申し上げたのですが、

ともに宮中を出たのに、入り行く先を見せてくれない、十六夜の月よ。

と恨むのも、〔源氏には〕しゃくに障ったが、この君だとご覧になると、少しおもしろい気分になった。「人の思いも寄らないことをするものだね」と、憎まれ口を言う。

里を分け隔てず照らす光を見ても、月が入るその山を、誰が訪ねるというのだろう。

「こうして、後を追って歩いたなら、どうなさいますか」と、〔中将は〕申し上げる。

「まじめな話、このようなお出かけにも、お供によってこそ、役に立つこともあるでしょう。私を、後に置いていかないでください。身分を隠してのお出歩きでは、人から軽く扱われることも起こりましょう」と、逆に、〔源氏を〕お諫め申し上げる。こんなふうに、見つけられてばかりなのを、悔しくお思いになるが、あのなでしこは、探し出して知ることもできないのにと、愚かなことと、お心の中に、お思い出しになる。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第6冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。