第11帖 花散里 / 第1場面
五月雨の晴れ間に
あらすじ・人物・読み方
世の憂いを抱える源氏は、故院の女御とその妹を訪ねようと思い立ちます。
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現代語で読む
人には知られない、ご自身の心から生じる悩みは、いつも絶えないことのようだが、このように世間一般のことについてまでも、煩わしく思い乱れることばかり増すので、何となく心細く、世の中のすべてが疎ましく思われるようになるが、それでもなお、捨てきれないことが多い。
麗景殿と申し上げていた〔女御〕は、お子の宮たちもいらっしゃらず、院がお亡くなりになった後、ますます寂しいご境遇にあるのを、ただこの大将殿〔源氏〕のお心遣いに庇われて、暮らしていらっしゃるのであろう。
その妹の三の君とは、宮中のあたりで、ほんの束の間、〔源氏が〕かすかに心を通わせた縁があり、いつものお心なので、やはりすっかりお忘れにもなれず、格別にお世話をなさらないため、相手のお心ばかりをすっかり疲れさせていらっしゃるらしいことも、このごろ何から何まで思い悩んでいらっしゃる、世のしみじみとした思いの種として思い出されると、こらえがたくなって、五月雨の空が珍しく晴れた雲の切れ間に、お出かけになる。特別な装いもなく、目立たない姿で、先払いなども大げさにせず、人目を忍んでいらっしゃった。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第11冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。