ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第15帖 蓬生 / 第5場面

侍従への縁談

あらすじ・人物・読み方

宮に残るのは乳母子の侍従だけで、その叔母にあたる受領の北の方が時々通ってくる。叔母は姫君を軽んじながらも、娘たちの使い人にしたいと琴の音を聞かせてほしいなどと言い寄る。侍従も勧めるが、君のものづつみの深さに、叔母はもどかしく思う。

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現代語で読む

侍従などと言ったお乳母子だけが、長年離れ果てない者としてお仕えしていたけれど、通い参っていた斎院がお亡くなりになるなどして、たいそう堪えがたく心細いところに、この姫君の母の北の方の同腹の姉妹で、世に落ちぶれて受領の北の方になっている人があった。

〔叔母は〕娘たちを大切に育て、相応の若い人々も、「まったく知らない所よりは、親たちも参り通った間柄だから」と思って、時々行き通う。この姫君は、このように人を疎んじるご癖なので、親しくお便りし合うこともない。

「〔姫君は〕私をば軽んじて、恥ずかしい目に遭わせるようにお思いだったので、姫君のご様子がお気の毒でも、お訪ね申し上げられないのです」などと、生憎らしい言葉を言い聞かせながら、時々〔叔母は姫君に〕申し上げていた。

もともとそれ相応であった並々の人は、かえって身分のよい人の真似に心を整え、思い上がる者も多いのに、やんごとなき筋でありながら、ここまで落ちるべき宿世があったからだろうか、心が少し率直なお叔母であった。

「私がこう落ちぶれた様子で、見下されるように思われてきたのを、どうにかして、この世の末に、この君を私の娘たちの使い人にしてやりたいものだ。気立てなどの古風な方はあるにしても、たいそう頼りになる後見になるだろう」と思って、「時々こちらにお越しくださいまし。お琴の音も承りたいと願う人がおりますので」と申し上げていた。この侍従も、常々〔叔母が〕誘いかけるけれど、人と競う心からではなく、ただはなはだしいお方のものづつみであるので、それほど親しみなさらないのを、〔叔母は〕残念に思っていた。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第15冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。