第15帖 蓬生 / 第6場面
大弐の下向
あらすじ・人物・読み方
家主人が大弐になって九州へ下ることになり、君を誘おうと言い寄るが、君は決して応じない。北の方は、薮原に年を経る人を源氏の大将も重んじはしないだろうと怨んでなじる。
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こうしているうちに、あの家の主人は、大弐になった。娘たちをしかるべき様子に整えて置いて、下って行こうとする。この君を、なおも誘おうという心が深くて、「遥か遠くへ、こうしておいとましようとするのに、心細いご様子を、常々お訪ね申し上げはしませんでしたが、近くに頼みとしておりました間こそあれ、たいそう哀れに後ろめたく存じます」などと言い募るのを、まったくお聞き入れにならないので、「まあ、憎らしい。大げさなこと。お心ひとつに思い上がりなさっても、あんな薮原で年を経ている人を、大将殿も、大切に思い申し上げはなさるまい」などと、怨みなじっていた。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第15冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。