第17帖 絵合 / 第6場面
伊勢物語をめぐる歌の応酬
あらすじ・人物・読み方
『伊勢物語』と『正三位』の優劣をめぐって、平内侍と右の典侍が歌を交わして応酬し、中宮も歌を添える。若い女房たちは絵を一目見たがるが、固く秘められる。
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現代語で読む
平内侍は、
伊勢の海の深い心をたどりもしないで、古くなった跡だといって、波が消してしまうのだろうか。
世の常の浮ついたことの引き繕い飾ったものに圧されて、業平の名を朽ちさせてよいものか」
と、言い争いかねた。右の典侍は、
雲の上に思い登っている心には、千尋の底もはるかに見える。
「兵衛の大君の心の高さは、なるほど捨てがたいけれど、在五中将の名を、朽ちさせることはできない」
とおっしゃらせて、宮〔中宮〕は、
海松は浦に古びてしまったでしょう。年を経た伊勢の海人の名を、沈めてしまうのでしょうか。
このような女ぶりの言葉で、入り乱れて争うが、一巻に言葉を尽くしても、言い尽くすことができない。ただ、浅はかな若い女房どもは、死ぬほど見たがるけれど、主上のも宮のも、片端さえも見ることができず、たいそうひどく秘めさせなさる。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第17冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。