第21帖 少女 / 第2場面
女五の宮の御方、朝顔をめぐる応酬
あらすじ・人物・読み方
源氏は女五の宮にも折々文を贈り、宮は源氏の容貌と心ばえを褒めるが、若い女房たちはその古風さを笑う。宮が前斎院に源氏との縁を勧めると、姫君は亡き父宮にも頑固と思われて過ごした身の上を持ち出して断り、源氏は姫君の心が和らぐのを待つばかりである。
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現代語で読む
女五の宮のお方にも、このように折々を過ごさず〔源氏が〕お便りを申し上げなさるので、たいそうしみじみと、
「この君〔源氏〕を、昨日今日の幼子と思っていたのに、このように大人になって、お便りをくださること。お姿がたいそう清らかであるのに加えて、お心まで人より格別にお育ちになったことよ」
と、お褒め申し上げなさるのを、若い女房たちはお笑い申し上げる。
こちら〔前斎院〕にも〔女五の宮が〕対面なさる折には、
「この大臣〔源氏〕が、このようにたいそう熱心に申し上げておられるようですが、どうして、今始まったご好意でもありません。亡き父宮も、事情が違ったものにおなりになって、〔源氏と〕お会わせ申し上げることができなかった嘆きをなさっては、思い立ったことを無理に引き離しなさったことなどを、お口に出しなさりながら、悔しそうにお思いになった折々がありました。
けれども、亡き大殿の姫君がおいでになった間は、三の宮がお思いになることがお気の毒で、あれこれ言い添え申し上げることもなかったのです。今は、その高貴で避けられない血筋でおいでになった人さえ、お亡くなりになってしまったので、本当に、どうして、そのようで〔源氏と結ばれて〕おいでになっても悪くはないだろうと心に思われますにつけても、その上に重ねてこのように熱心に申し上げなさるのも、そうなるべき縁なのであろうと存じます」
などと、たいそう古風に申し上げなさるのを、〔前斎院は〕好ましくないとお思いになって、
「亡き父宮にも、そのように頑固な者と思われ申し上げて〔生涯を〕過ごしてまいりましたのに、今さら、また世間になびくようなことがありましても、たいそう似つかわしくないことでございます」
と申し上げなさって、恥ずかしそうなご様子であるので、〔女五の宮も〕無理にも申し上げて〔前斎院の〕気持ちを向けさせることはおできにならない。
宮人〔前斎院の女房たち〕も、身分の上下を問わず、皆〔源氏に〕心を寄せ申し上げているので、世の中がたいそう気がかりにばかりお思われになるけれど、あの御方〔源氏〕ご自身は、自分の心を尽くし、しみじみとした情愛をお見せ申し上げて、人〔前斎院〕のご様子が自然と和らぐ時をこそ待ち続けておいでになるのであって、そのように無理な様子で、〔姫君の〕お心を破り申し上げるようなことは、お思いでないようだ。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第21冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。