第22帖 玉鬘 / 第4場面
大夫監の求婚
あらすじ・人物・読み方
肥前の姫君の評判は広まり、肥後の大夫監が執拗に求婚する。少弐の息子たちの心は割れるが、中の兄豊後介は、亡き少弐の言い置きどおり姫君を京へ上げる決意を固める。
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現代語で読む
娘たちも息子たちも、それぞれ土地にちなんだ縁故ができて、住み着いている。心の中では〔上京を〕急いではいるが、京のことはますます遠ざかるように隔たっていく。〔姫君は〕物事が分かるにつれて、世をたいそうつらいものとお思いになり、三年ほどもお過ごしになる。二十歳ほどにおなりになるにつれて、成長が整って、たいそうもったいなく立派である。
この住む所は、肥前国といった。その辺りでも少し由緒のある人は、まずこの少弐の孫〔姫君〕の様子を聞き伝えて、なお絶えず訪れて来るのも、たいそうひどく、耳がうるさいほどである。大夫監といって、肥後国に一族が広く、かの地では評判があり、勢いの盛んな武士がいた。無骨な心の中に、少し好色な心が混じって、容貌のよい女を集めて見ようと思っていた。この姫君を聞きつけて、
「ひどい欠点があっても、私は見ないふりをして〔妻として〕持ち続けよう」と、たいそう熱心に言い寄るのを、たいそう無骨で嫌だと思って、「どうにかして、こんなことを聞かずに、尼になろうとする」と言わせたところ、〔大夫監は〕ますます危ぶんで、無理にこの国に越えて来た。
この息子たちを呼び寄せて、語らいかけることは、「思うようになったら、同じ心で勢力を交わし合うべきこと」などと語らうと、二人は〔大夫監に〕なびいてしまった。「しばらくは、ふさわしくなくあわれと申し上げていたが、それぞれ我が身の頼りにするなら、たいそう頼もしい人だ。これに悪く扱われては、この近い世界には巡り歩けまい」
「よい人のご血筋といっても、親に数え入れ申し上げられず、世に知られなければ、何の甲斐があろうか。この人がこう熱心に思い申し上げなさることこそ、今はご幸運である」「そうなるはずだからこそ、このような世界にもおいでなのだろう。逃げ隠れなさっても、何の強いことがあろうか」「負けじ魂で、怒ったなら、しないようなことまでしてしまうだろう」と言って脅すと、「たいそうひどい」と聞いて、中の兄である豊後介は、
「やはり、たいそう怠慢で、もったいないことだ。故少弐がおっしゃったこともある。あれこれ工夫して、京へお上げ申し上げよう」と言う。娘たちも泣き惑って、「母君が甲斐なくさすらいなさって、行方さえ知らない代わりに、人並みに〔姫君を〕お見申し上げようと思うのに」「そのような者の中に〔姫君が〕交わりなさってしまうこと」
と思い嘆くのを知らずに、「私はたいそう評判の高い身分だ」と思って、手紙などを書いて送る。字など汚らしくなく書いて、唐の色紙を、香ばしい香に含ませながら、趣深く書いたと思っている言葉が、たいそう田舎じみていた。我が身も、この家の次郎を語らい取って、連れて来た。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第22冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。