ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第23帖 初音 / 第3場面

姫君の御方での小松引き、明石の君の歌と姫君の返歌

あらすじ・人物・読み方

源氏が姫君の御方へ渡ると、童女たちが御前の山で小松引きに遊び、北の御殿から鬚籠や破籠が届けられる。明石の君が松に引かれて年月を経た人へ初音を聞かせてほしいと歌を贈ると、源氏に促された姫君は、巣立った松の根を忘れないと返歌を書く。

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現代語で読む

〔源氏が〕姫君の御方へお渡りになると、童女や下仕えなどが、御前の山で小松引きをして遊んでいる。若い人々の気持ちは、収まりどころがないように見える。北の御殿から、わざわざといった様子で集めた鬚籠どもや、破籠などを〔明石の君が〕献上なさっていた。言いようもなく美しい五葉の枝に移る鴬も、思う心があるのだろう。

年月を松に引かれて過ごしてきた人に、今日は鴬の初音を聞かせてください。『音もしない里の』〔という古歌の句を引いて〕」

と〔明石の君が源氏に〕申し上げなさったのを、〔源氏は〕「本当に、しみじみと心に沁みる」とお分かりになる。〔明石の君は〕言忌みもしきれないご様子である。

「このお返事は、ご自身で申し上げなさい。初音を惜しみなさるべきお方でもないでしょう」

と言って、〔源氏は〕御硯を用意して差し上げ、〔姫君に返歌を〕書かせ申し上げなさる。〔姫君は〕とても愛らしくて、日々拝見申し上げている人でさえ、見飽きずに思い申し上げるご様子なのに、今まで〔明石の君とは〕はっきり分からない年月の隔たりがあったことも、〔源氏は〕「罪を得るようで、心苦しい」とお思いになる。

引き離れて年月は経ちましたが、鴬が巣立った松の根元を忘れることがありましょうか。決して忘れません。

幼いお心に任せて、〔返歌は〕念を入れた様子であるようだ。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第23冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。