ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第23帖 初音 / 第5場面

西の対の玉鬘との対面

あらすじ・人物・読み方

源氏は西の対へ渡り、玉鬘と対面する。華やかな玉鬘の姿に心を引かれながらも、源氏は他の御方々へも渡るよう勧め、玉鬘はお言葉に従うと答える。

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まだそれほど住み慣れなさっていない頃よりは、様子を趣深く整えて、愛らしい童女の姿が優美で、人影が多くいて、お部屋のしつらえは、あるべき限りを尽くしているけれど、細かな御調度は、それほどお揃えになっていないのを、その方面で清らかに住まいを整えていらっしゃった。

ご本人〔玉鬘〕も、ああ愛らしいと、ふと見えて、山吹の襲で引き立てられた御容貌など、たいそう華やかに、ここが曇っていると見える所もなく、隈なく匂わんばかりにきらきらと輝いて、見ていたいようなお姿をしていらっしゃる。物思いに沈んでいらっしゃった間の仕業だろうか、髪の裾が少し細くなって、さらりとかかっているのも、たいそう清らかで、あちこちたいそう鮮やかなお姿でいらっしゃるのを、「こんなふうに逢わなかったなら」とお思いになるにつけても、〔源氏は〕決して見過ごしなさるはずもない。

このようにたいそう隔てなく拝見し慣れなさったけれど、やはり思うに、隔たりが多く不思議なことが、現実の心地もなさらないので、〔玉鬘が〕完全には打ち解けずに振る舞っていらっしゃるのも、たいそう興味深い。

「長年の〔親しさの〕ような心地がして、拝見するのにも気が安らぎ、本望が叶ったのを、包み隠さず振る舞いなさって、あちら〔他の御方々〕などへもお出向きくださいな。幼く琴を習い始めた人もいるようなので、ご一緒に聞き慣らしなさってください。気がかりな、軽はずみな心持ちの人はいない所です」

と〔源氏が〕申し上げなさると、

「おっしゃるままにこそ〔従いましょう〕」

と〔玉鬘は〕申し上げなさる。それももっともなことであるよ。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第23冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。