第25帖 蛍 / 第4場面
馬場の御殿の手結ひ見物
あらすじ・人物・読み方
馬場の御殿で夕霧が催す手結ひを、対の女房たちも簾を掛けて見物する。装いを競う童女たち、親王たちの遊びは夜に入るまで続き、舎人どもに禄が与えられる。
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現代語で読む
楽玉〔玉の贈り物〕など、言いようもない立派さで、方々から多く〔届いた〕。お思い沈んでいた年頃の名残もないご様子で、お心が緩みなさることも多いところに、「どうせなら、人が傷つくほどのこともなくて済んでほしいものだ」と、どうしてお思いにならないことがあろうか。
殿〔源氏〕は、東のお方〔玉鬘〕のところへも差し覗きなさって、「中将〔夕霧〕が、今日の司の手結ひのついでに、男どもを引き連れて行うような様子で言ったのを、その心づもりでいなさい。まだ明るいうちに来るはずの者だよ。あやしいことに、ここでは大げさでなく忍んでいることをも、この親王たちが聞きつけて、お訪ねになるので、自然と仰々しくもあるのを、用意しなさい」などと申し上げなさる。
馬場の御殿は、こちらの廊から見通せるほど遠くない。
「若い人々よ、渡殿の戸を開けて物見をしなさい。左の司には、たいそう風情のある官人が多いころだよ。少々の殿上人に劣るまい」とおっしゃると、〔人々は〕物見することをたいそうをかしいと思った。
対のお方〔玉鬘〕のところからも、童女などが、物見に渡って来て、廊の戸口に御簾を青々と掛け渡して、今風な裾濃の御几帳どもを立て渡し、童や下仕えなどがうろうろする。菖蒲襲の衵に、二藍の羅の汗衫を着た童女は、西の対の〔者〕であるようだ。
好ましく馴れた者ばかり四人、下仕えは、楝の裾濃の裳に、撫子の若葉の色をした唐衣で、今日の装いどもである。
こちらの〔童女〕は、濃い一襲に、撫子襲の汗衫などをおっとりと着て、それぞれ挑むような顔つきのもてなしで、見所がある。
若々しい殿上人などは、目を立てて様子をうかがう。未の時に、〔源氏は〕馬場の御殿にお出かけになって、なるほど親王たちがいらして集まっていた。手結ひの公事には様子が変わって、次将たちが連れ立って参って、様子が格別に今風に遊び暮らしなさる。
女たちは、何の見分けも知らないことだけれど、舎人どもまでも艶な装束を尽くして、身を投げ打った手の惑わしなどを見るのは、をかしいことだった。
南の町も通して、遥々としているので、あちらでもこのような若い人々は見た。「打毬楽」「落蹲」などを遊んで、勝ち負けの乱声どもの騒ぎ立てるのも、夜に入り果てて、何事も見えなくなってしまった。舎人どもへの禄が、品々に与えられる。ひどく更けて、人々は皆お帰りになった。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第25冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。