源氏物語 第25帖
蛍 ほたる
あらすじ
亡き夕顔の娘・玉鬘を迎えた源氏は、養父としての配慮と抑えがたい思いのあいだで揺れる。源氏は蛍兵部卿宮が訪れた夜、玉鬘の姿を蛍の光に照らして見せ、宮の恋心をかき立てる。五月五日の菖蒲の歌の応酬、長雨の夜の物語論を経て、源氏は夕霧を玉鬘に近づけ将来を譲ろうとする。一方、実の父・内大臣は行方知れぬ娘を思い続け、夢占いにその兆しを聞く。
この帖の人物
場面 第1–5場面
第1場面対の姫君への源氏の思い、兵部卿宮の言い寄り重々しい身の上になった源氏は、対の姫君・玉鬘への恋心に心を乱し、姫君も源氏を疎ましく思っている。五月雨のころ、兵部卿宮が真剣に言い寄せ、源氏は姫君に返事を書かせ、書けない時は宰相の君に代筆させる。第2場面蛍の夜、兵部卿宮の訪問兵部卿宮が対を訪れ、几帳を隔てて思いを訴える。奥に引く玉鬘を見た源氏は、薄い布に包んでおいた蛍を放ち、その光で姫君の姿を宮にのぞかせる。宮は歌を贈り、玉鬘も返歌をして、宮は夜更けて濡れながら帰る。第3場面五月五日、宮の文と菖蒲の歌の応酬源氏は端午の日に馬場の御殿へ出るついでに対へ渡り、蛍宮の夜更かしを戒めるような言葉を残す。宮から菖蒲の歌を結んだ文が届き、玉鬘は源氏にせがまれて若々しい返歌をする。第4場面馬場の御殿の手結ひ見物馬場の御殿で夕霧が催す手結ひを、対の女房たちも簾を掛けて見物する。装いを競う童女たち、親王たちの遊びは夜に入るまで続き、舎人どもに禄が与えられる。第5場面紫の上と菖蒲の歌の応酬源氏は紫の上のもとに休み、兵部卿宮の人柄を語る。紫の上は宮の大人びた様子をほめ、源氏は菖蒲の歌を贈り、紫の上も若駒の歌で返す。隔てなく語らう二人の仲が描かれる。
場面 第6–8場面
第6場面長雨の物語論長雨の退屈に、御方々は絵物語で明かし暮らす。西の対で物語に夢中の玉鬘を見た源氏は、女は物語に欺かれるものだと言いながら、物語の真実と仏の方便にまで及ぶ有名な物語論を語り、最後は姫君への思いを歌に託す。第7場面紫の上の物語談義紫の上も物語を捨てがたく思い、『くまのの物語』の絵を見て昔を思い出す。源氏は玉鬘の前で世馴れた物語を読ませるなと言い、紫の上は『宇津保』の藤原君の女を引き合いに物語の人物像を論じる。第8場面夕霧への譲りと内大臣の夢占い源氏は夕霧を玉鬘に近づけ、将来を譲ろうとする。一方、内大臣は亡き撫子の君との間の姫君の行方を思い続け、夢占いで「知られなかった御子を聞き出すことがある」と告げられる。
出典・底本
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第25冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。