ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第29帖 行幸 / 第2場面

行列を見物する玉鬘

あらすじ・人物・読み方

西の対の姫君・玉鬘も車を出して行列を見物する。競って飾り立てた人々の中でも、帝の端正なお姿は比べる者もない。実の父・内大臣に目を留めるが、やはり御輿の中の帝に目移りするはずもなかった。兵部卿宮や右大将の装いを若い心に見下ろしながら、玉鬘は源氏に勧められる宮仕えのことを思い悩む。

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現代語で読む

西の対の姫君(玉鬘)も〔車を〕出しておられた。あれほどまでに競い尽くして飾り立てた人々の容貌やありさまをご覧になると、帝は、赤色の御衣を召されて、端正で少しの乱れもないお側の様子は、比べ申すことのできる人はいない。

実の父である大臣に、人知れず目をお留めになるけれど、華やかで清らかな様子で、男盛りにおられるけれど、やはり限りがある。たいそう人に優れた、ただの人と見えて、御輿の中〔の帝〕のほかに、目移りするはずもない。

まして、「ご容貌がおありだ」「風情がある」などと、若い女房たちが消え入りそうに心を奪われる中将・少将や、誰それといった殿上人のような人は、何でもないもののように〔光を〕失っているのは、〔帝が〕まったく比類なくおいでだからなのだった。源氏の大臣のお顔立ちは、別格のものともお見えにならないのを、思いなしに、今は少し威厳があって、畏れ多くも立派なのである。

それにしても、このような比類の方はおられにくいのだった。高貴な人は、皆清らかで様子も並々でない方とばかり〔見えるのに〕、大臣や中将などのご威光に見馴れておられるのに、通り過ぎて消えてゆく人々が不完全なためだろうか、同じ目鼻とも見えず、残念にも圧倒されていることよ。

兵部卿宮もおられる。右大将は、あれほど重々しく風流ぶっていても、今日の装いはたいそう優美で、胡籙(やなぐい)などを背負って、お仕えしている。色黒く髭が目立って見えて、たいそう好感が持てない。どうして、女が繕い立てた顔の色合いなどに似ていようか。たいそう無理のあることを、〔玉鬘は〕若いお心に、見下ろしておられたのだった。

大臣の君(源氏)が思い寄っておっしゃることを、「どうだろう、宮仕えは、本心でもなく、見苦しいありさまになるのではないか」と思い憚っておられるのを、「馴れ馴れしい方面などは避けて、一般のご奉仕としてご覧入れられるのは、きっと風情もあるだろう」と、〔源氏は〕思い寄っておられたのである。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第29冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。