第29帖 行幸 / 第6場面
裳着の仕度と大宮の病
あらすじ・人物・読み方
源氏はまず玉鬘の裳着のことを整えようとし、二月に行うことにする。腰結には内大臣を頼もうと消息を送るが、相手方では大宮が去年の冬から病み、折が悪いとの返事がある。藤壺の存命のうちにこのことを公にしようと、源氏は見舞いがてら三条の宮へ渡る。
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現代語で読む
「とにかく、まずお裳着(もぎ)のことを」とお思いになり、その準備のお道具に、細かな立派な品々まで加えさせなさり、あれこれの儀式を、ご自分では少しもお考えでないことまでも、自然と世間並みに厳かになってゆくのを、まして、「内大臣にも、この折に知らせ申し上げよう」と思い寄られるにつけ、たいそう結構なことである。「年が改まって、二月に」とお思いになる。
「女は、評判が高く、名を隠しておくべき身分でもない人も、人の娘として籠もっておられる間は、必ずしも氏神へのお勤めなどで姿を現すこともない身分だからこそ、年月を紛れて過ごしてきたが、このたび、もし思い寄ることもあるならば、春日の神のお心に背くことになっても、結局は隠し通せるものではないのだから、つまらなく、わざとらしい後の評判まで、ますます立つことだろう。平凡な人の身際なら、今風といって氏は改めることもたやすいこともある」などと思い巡らすにつけ、「親子のご縁は、絶えるはずがない。どうせなら、自分の心が許すうちに、知らせ申し上げよう」
などと思い定めて、このお腰結(こしゆい)には、あの大臣をと、お手紙で申し上げなさったところ、大宮が、去年の冬ごろからご病気で、全くお癒えにならないので、こうした折に重なっては具合が悪かろうとの旨を、申し上げなさった。
中将の君(夕霧)も、夜も昼も三条にお仕えしていて、心の隙もなく過ごしておられるので、折の悪いことを、どうしたものかと〔源氏は〕お思いになる。
「世の中は、まことに定めがない。宮(藤壺)がお亡くなりになれば、喪に服さねばならないのに、知らない顔をして過ごすのは、罪深いことが多かろう。おいでになるうちに、このことを表沙汰にしよう」
と思い取りなさって、三条の宮へ、見舞いがてらお出かけになる。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第29冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。