第30帖 藤袴 / 第1場面
尚侍出仕への不安
あらすじ・人物・読み方
玉鬘は尚侍としての出仕を勧められるが、源氏への遠慮と実父・内大臣への気兼ねから思い悩む。実の親が見つかった後も、源氏の隔てのないもてなしがかえって嘆きを深める。
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現代語で読む
尚侍としての宮仕えのことを、誰もかれも〔玉鬘に〕勧めなさるのも、
「どうなることでしょう。親と思い申し上げる方〔源氏〕のお心でさえ、打ち解けることのできない世の中なのですから、ましてあのような宮中の交わりの中で、心ならずも具合の悪いことがあったら、中宮も女御も、方々でお気をお遣いになったら、ばつが悪かろうに、わが身はこのように頼りないありさまで、どちらにも深く思い留められ申し上げるほどでもなく、評判も浅くて、ただならず思い言われ、どうして人笑いになる様子に見聞きなさろうかと、〔出仕を〕お引き受けなさる方々も多く、とかくにつけて、心安らかでないことばかりがありそうなのを」と、物事をお分かりにならないほどでもないので、さまざまに思い乱れ、人知れず嘆かわしく思う。
「そうかといって、こうした身のありさまも悪いことではないけれど、この大臣〔源氏〕のお心のありようが、厄介で気に障るのも、どういう機会に〔内大臣が〕、〔私を源氏から〕引き離して、人が推し量りそうな筋合いを、すっきりと決着がつくことでしょう。実の父の大臣〔内大臣〕も、この殿〔源氏〕のお考えのところを、遠慮なさって、張り合って〔私を〕引き離し、はっきりなさるようなことでもないので、やはりどう転んでも、見苦しく、中途半端なありさまで、心を悩ませ、人に騒ぎ立てられる身の上なのでしょう」
と、かえってこの実の親が尋ね申し上げて〔見つかって〕後は、特に遠慮なさる様子もない大臣の君〔源氏〕のおもてなしが加わりつつ、〔玉鬘は〕人知れず嘆かわしく思っていたのである。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第30冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。