ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第30帖 藤袴 / 第2場面

夕暮れの玉鬘と夕霧の参上

あらすじ・人物・読み方

相談すべき女親もなく、夕暮れの空を眺める玉鬘のもとへ、源氏の使いとして宰相中将・夕霧が訪れる。薄い喪服姿の二人は、互いに引き立て合って美しい。

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思うことを、十分でなくとも、少しでも打ち明けられそうな女親もいらっしゃらず、どちらもどちらも、たいそう気恥ずかしそうで、たいそう立派なご様子の方々には、何事をどうして、こうです、ああですとも、申し分け申し上げられようか。世の人に似ないわが身のありさまを、ぼんやり眺めながら、夕暮れの空のしみじみとした様子を、端近くに座って眺め出していらっしゃる様子は、たいそう趣がある。

薄い鈍色のお衣装は、親しみ深いほどに落ち着いた趣で、普段と変わった色合いであるのに、お顔立ちはたいそう華やかに引き立っていらっしゃるのを、お側にいる女房たちは、微笑んで見申し上げているところへ、宰相中将〔夕霧〕は、同じ色の、今すこし濃い色の直衣姿で、纓を巻いていらっしゃる姿も、またたいそう優美で清らかでいらっしゃった。

初めから、真心こめてお心を寄せ申し上げていらっしゃるので、よそよそしく疎んじた様子には、お扱いなさらなかった習わしで、今、そんなことはなかったとて、ひどく変わってしまうのも具合が悪いので、やはり御簾に几帳を添えたご対面は、人づてではなく直接なのであった。殿〔源氏〕のお手紙によって、内裏からご沙汰のある様子を、そのままこの君〔夕霧〕が承っていらっしゃるのであった。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第30冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。