第31帖 真木柱 / 第7場面
片敷の袖の文
あらすじ・人物・読み方
灰の事件で泣き明かした鬚黒の大将は、翌朝、玉鬘へ言い訳の文と片敷の袖の歌を送る。しかし玉鬘は夜離れを何とも思わず、大将の心のときめきにも目を留めないので返歌はない。大将は胸をつぶして思い暮らす。
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現代語で読む
一晩中、〔北の方に〕打たれたり引かれたりして、泣き乱れて夜を明かしなさり、少しお休みになっている間に、〔玉鬘のいる〕あちらへお手紙を差し上げなさる。
「昨夜、急に消え入りそうな人がおりましたので、雪の様子も〔文に〕書き出しにくく、ためらっておりましたところ、〔私の〕身まで冷えてしまいました。あなたの御心はともかくとして、周りの人がどう取りなしたことでしょう」
と、殊勝に〔型どおりに〕お書きになっていた。
心までも空に乱れる雪の夜に、独り冷え冷えと片袖を敷いて寝る私の袖よ。堪えがたいことです」
と、白い薄様紙に、几帳面にお書きになっていたけれど、特に風情のあるところもない。筆跡はとても清らかに見える。才気走ったふうにお振る舞いになっていたのだった。
尚侍の君〔玉鬘〕は、〔大将の〕夜離れを何ともお思いにならないのに、このように〔大将が〕心をときめかせているのを、目にもお留めにならないので、お返事はない。男〔大将〕は、胸がつぶれる思いで、思いに暮れて過ごしなさる。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第31冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。