第41帖 幻 / 第13場面
一周忌の法事と扇の歌
あらすじ・人物・読み方
紫の上の一周忌が近づき、法事の準備に紛れる中でも、源氏の悲しみは尽きない。正日、中将の君の扇に一周忌を区切りとすることへの疑問を詠み、さらに扇を取りて自分の命の末と残る涙を書き添える。
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風の音さえ尋常でなく感じられる頃に、〔紫の上の〕法事の営みのため、月初め頃は慌ただしい様子である。「今まで過ぎてきた月日よ」とお思いになっても、呆然として日々を明かし暮らしておられる。
〔一周忌の〕正日には、身分の上下を問わず人々が皆物忌みをして、あの曼陀羅などを、今日こそ供養させなさる。いつもの宵の勤行の際に、お手水などをお差し上げする中将の君の扇に、あなたを恋い慕う涙に際限はないのに、今日をいったい何の区切りと言おうか。
と〔扇に〕書きつけたのを、〔源氏は自ら〕取り上げてご覧になり、人を恋い慕う私の身も終わりに近づいていくけれど、まだ多く残っているのは涙であった。と、書き添えなさる。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第41冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。