第41帖 幻 / 第14場面
重陽の菊と神無月の幻
あらすじ・人物・読み方
九月九日、源氏は綿を覆った菊を眺め、かつて共に露に濡れた日々を一人で思う。神無月には雁の翼さえ羨ましく、夢にも現れない亡き人の魂の行方を幻に尋ねる歌を詠む。
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現代語で読む
九月になって、九日、綿を覆った菊をご覧になり、二人で一緒に置かれた菊の白露も、今は一人だけの袂にかかる秋であることだ。
神無月には、世間も時雨がちになる頃で、ますます物思いに眺めておられ、夕暮れの空の様子にも言いようのない心細さで、「降りしかど」と独り言を言っておられる。雲の彼方を渡る雁の翼も、羨ましく幻のように思い浮かべておられる。大空を通う幻よ、夢にさえ現れてこないあの人の魂の行方を捜し尋ねてほしい。
何事につけても、〔悲しみは〕紛れることなく、月日がたつにつれてますますお思いになる。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第41冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。