ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第42帖 匂兵部卿 / 第3場面

薫の生い立ち

あらすじ・人物・読み方

二品宮の若君(薫)は冷泉院にことにかしづかれ、十四歳で侍従、のち右近中将となる。母宮は行いに専心し、若君への思いは深い。

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現代語で読む

二品宮の若君〔薫〕は、院〔源氏〕が言いつけておられたままに、冷泉院の帝が、とりわけお思いになって大切にし、后の宮も、皇子たちなどがおいででなく、心細く思われるままに、嬉しい御後見として、心から頼りに申し上げていらっしゃった。

御元服なども、院〔冷泉院〕でさせなさる。十四歳で、二月に侍従におなりになる。秋、右近衛中将になって、御昇進の加階などまでも、どこが頼りないというのか、急いで加えて大人扱いさせなさる。お住まいの御殿に近い対を〔薫の〕控え室に設えるなど、御自身お目を入れて、若い人も、童も、下仕えまで、優れた者を選び整え、女性の御儀式よりもまばゆく整えさせなさった。

帝にも宮にもお仕えする女房の中でも、容貌がよく、上品で感じのよい者は、皆〔薫のもとへ〕移し渡させなさりながら、院のうちを心にかけて、住みよく暮らしよく思うようにとばかり、わざわざした御世話の種にお思いになっていらっしゃった。亡き致仕の大臣の娘で女御と申し上げた方のお腹に、女宮がただ一所おいでだったのを、限りなく大切になさる御様子に劣らず、后の宮の御寵愛が、年月とともに増していく気配であるのは、どうしてそれほどまで、と見えるほどであったよ。

母宮〔女三の宮〕は、今はただ御修行を静かになさって、月ごとの御念仏、年に二度の御八講、折々の尊い御営みばかりをなさって、所在なくおいでなので、この君〔薫〕が出入りなさるのを、かえって親のように、頼もしい蔭とお思いになっているので、たいそうしみじみとして、院にも内裏にも、お召しになって離さず、春宮も、次々の宮たちも、なつかしい御遊び相手としてお伴させなさるので、暇なく苦しく、「どうにか身を分けたいものだ」と、お思いになっていた。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第42冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。