ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第42帖 匂兵部卿 / 第8場面

賭弓の還饗

あらすじ・人物・読み方

賭弓の還饗の支度が六条院で整えられ、当日は親王たちが集まる。左方が勝ち、兵部卿宮・常陸宮らは一つの車で院へ向かい、押し留められた宰相中将も加わって、雪の夕暮れに管弦を吹き立てて入る。

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現代語で読む

賭弓の還饗の支度を、六条の院でたいそう心をこめてなさって、親王たちもおいでいただこうとの心遣いをなさった。

その日、親王たち、大人でおいでの方は、皆お仕えなさる。后腹の方は、いずれともなく、気高く清らかでおいでの中にも、この兵部卿宮〔匂宮〕は、まことにたいそう優れてこの上なく見えなさる。四の親王、常陸宮と聞こえる、更衣腹の方は、思いなしであろうか、様子がこの上なく劣っていらっしゃった。

いつものように、左が、強いて勝った。いつもよりは、早く事が終わって、大将が退出なさる。兵部卿宮、常陸宮、后腹の五の宮と、一つの車に招き乗せ申し上げて、退出なさる。宰相中将〔薫〕は、負け方で、音もなく退出なさってしまったのを、「親王たちのおいでの御送りには、参りなさらないのか」と、押し留めさせて、御子の右衛門督、権中納言、右大弁など、他の上達部も数多く、あれこれに乗り混じり、誘い立てて、六条の院へおいでになる。

道中のやや時が経つと、雪が少し散って、艶やかな黄昏時である。物の音ををかしいほどに吹き立て遊んでお入りになるのを、「まことに、ここを置いて、どのような仏の国に、このような折節の心の遣り所を求めようか」と見えた。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第42冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。