ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第44帖 竹河 / 第12場面

藤の花の贈答

あらすじ・人物・読み方

夕暮、薫は藤侍従と歩き、御息所の御前で藤の花の歌を交わす。

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現代語で読む

夕暮れの静かな時に、〔薫が〕藤侍従と連れ立って歩いていると、あの御方〔女御〕の御前近くに見渡される五葉松に、藤がとても見事に咲きかかっているのを、水のほとりの石の上に、苔を蓆として眺めていらっしゃった。〔お二人は〕正面からは言わず、世の中を恨めしそうにほのめかしながら語り合う。

手にかけるものだったなら、藤の花は松より勝る色を見せるだろうか。

と言って、花を見上げた様子などが、不思議にしみじみと心苦しく思われるので、〔藤侍従は〕自分の心のままにならない世の様子についてほのめかす。

紫の色は〔ゆかりが〕通っていても、藤の花は心にどうしてもかからなかったのです。

〔藤侍従は〕まじめな君で、〔薫を〕お気の毒に思っていた。〔薫は〕ひどく心乱れるほど思い焦がれてはいなかったけれど、残念には思われたのだった。

あの少将の君〔蔵人少将〕こそは、真剣に、どうしたらよいかと、過ちもしでかしそうに、鎮めがたく思われたのだった。〔大君に〕申し上げていらした人々の中には、中の君へと、心移りする者もある。少将の君については、母北の方〔雲居雁〕の御恨みのため、〔玉鬘が〕それもよいかとお思って、ほのめかし申し上げなさったのに、〔少将は〕絶えて訪れなくなってしまった。

院〔冷泉院〕には、あの君たち〔薫たち〕も、もともと親しくお仕えしていらっしゃるけれど、〔女御が〕参上なさって以後、めったに参らず、たまに殿上の方を覗いても、つまらなく、逃げるように退出するのだった。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第44冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。