ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第44帖 竹河 / 第16場面

女宮の誕生

あらすじ・人物・読み方

卯月、大君が女宮を出産する。女一の宮に並ぶ寵愛の中で、後宮の隔たりも生じてゆく。

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現代語で読む

四月に、女宮〔冷泉院と大君の皇女〕がお生まれになった。特に目立った催しがあるわけではなく、栄華というほどのこともないようであったが、院〔冷泉院〕の御意向に従って、右の大殿〔夕霧〕をはじめとして、御産養〔出産のお祝い〕をしてくださる方々が多かった。尚侍の君〔玉鬘〕が、ずっと抱きかかえて可愛がっていらっしゃると、早く〔院のもとへ〕参るようにとのお話ばかりがあるので、〔大君は〕五十日ほどの頃に〔院のもとへ〕参られた。

女一の宮がお一人いらっしゃるのに、〔新しい女宮が〕たいそう珍しく可愛らしくていらっしゃるので、〔院は〕たいそう素晴らしいとお思いになっていた。〔院は〕ますますただこちら〔御息所の方〕にばかりいらっしゃる。女御方〔女一の宮の母方〕の人々は、「本当にこんなことがあってよい世の中でしょうか」と、穏やかでなく言い思っていた。

ご本人たち〔院と女御・御息所〕のお心は、格別軽々しく背き合うというわけではないけれど、お仕えする人々の中に、意地の悪いことも起こったりしつつ、あの中将の君〔玉鬘の長男〕が、何といっても人々の長である立場でおっしゃったことが当たって、尚侍の君も、「むやみにこう言いたい放題言った末はどうなるのだろう。人の笑いものになって、体裁悪くも扱われるのではないか。上〔院〕の御心遣いは浅くはないけれど、長年お仕えなさっている御方々が、よくないと思って見放しなさったら、苦しいことにもなるだろう」とお思いになると、内裏〔今上帝〕では、本当にけしからぬとお思いになりながら、たびたび御不快の様子があると、人が告げ申し上げるので、煩わしくなって、中の姫君〔中の君〕を、公向きの形で〔宮中に〕交じらわせ申し上げようとお思いになって、尚侍〔の職〕をお譲りになった。

朝廷が、たいそう認めにくいこととしていたので、長年、こう〔辞職を〕お思いになっていながら、お辞めになれなかったのを、故大臣〔鬚黒〕のお心を思いやって、久しくなってしまった昔の例などを持ち出して、そのこと〔尚侍を中の君に譲ること〕が叶った。この君〔中の君〕の御宿世によることで、長年申し上げてきた〔辞職〕は難しいことだったのだと、見えた。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第44冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。