第44帖 竹河 / 第19場面
尚侍の譲り
あらすじ・人物・読み方
玉鬘は出家を思い立つが子たちに止められ、尚侍の職を中の君に譲る。
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現代語で読む
前の尚侍の君〔玉鬘〕が、容貌を変えよう〔出家しよう〕とお思い立つのを、
「あちらこちらにお世話申し上げなさっている折ですから、勤行も心が慌ただしくお思いになるでしょう。今もう少し、どちらも心穏やかになるのを見届け申し上げなさってから、気がかりなところなく、一筋に〔勤行を〕お勤めください」
と、君たち〔息子たち〕が申し上げなさると、〔玉鬘は出家を〕思いとどまって、内裏には、時々忍んで参られる折もある。院〔冷泉院〕へは、煩わしい御心遣い〔玉鬘への思い〕がなお絶えないので、しかるべき折も、まったく参られない。昔のことを思い出したが、さすがに、畏れ多く思われた恐縮の念に、世の人が皆許されないことと思っていたのをも、知らない顔で思って〔大君を院へ〕参らせ申し上げて、「自分までも、戯れにでも、若々しい浮名が世に聞こえたら、たいそう目も当てられず見苦しいだろう」とお思いになるけれど、そうした憚りがあるとは、また、御息所〔大君〕にも明かし申し上げなさっていないので、「私を、昔から、故大臣〔父鬚黒〕は取り分けて大切に思い可愛がってくださったのに、尚侍の君〔母玉鬘〕は、若君〔弟〕を、桜の争いのような、はかない折にも、心をお寄せになった名残で、私を軽んじなさったのだ」と、〔御息所は〕恨めしく思い申し上げていた。院の上〔冷泉院〕は、また、ましてたいそうつれない人だとお思いになりおっしゃっていた。
「古めかしいあたり〔年老いた私〕を差し置いて、軽んじられるのも、もっともなことだ」と、〔冷泉院は玉鬘に〕うち語らいなさって、しみじみとした思いがますます募るばかりである。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第44冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。